増える外国人経営者 静岡県内、輸入食料品店や人材紹介業など

 静岡県内で会社経営を手掛ける外国人が増えている。独自のネットワークを生かした輸入食料品店や、企業に母国の労働者を送り出す人材紹介業など小規模事業を中心に展開する。中長期的に外国人は増加する見込みで、起業の動きも続きそうだ。

妻のフィフィ・アフィヤンティさん(右)と一緒に輸入食材店を開業したジュマディさん。増加するムスリムの需要を見込む=3月中旬、藤枝市
妻のフィフィ・アフィヤンティさん(右)と一緒に輸入食材店を開業したジュマディさん。増加するムスリムの需要を見込む=3月中旬、藤枝市

 藤枝市在住のインドネシア人ジュマディさん(43)は3月下旬、イスラム教の戒律「ハラール」に則した食品を扱う小売店「ヌサンタラ」を開業した。30平方メートルほどのスペースに、母国などから輸入したインスタント食品や冷凍肉、マンゴーなど約200種類の商品が並ぶ。
 県内食品工場で働く中で、妻のフィフィ・アフィヤンティさん(40)と起業を決めた。「ハラール食材が調達できずに困っているムスリム(イスラム教徒)は多く、商機を見込んだ」と話す。
 法人の事業運営向けの「経営・管理」ビザで県内に住む外国人は2021年6月時点で224人と5年間で6割増えた。留学や会社勤務などを経て定着するほか、「永住者」の在留資格でレストランや小売店を開業するケースもあり、実態はより多くの外国人経営者が事業展開しているとみられる。
 日本滞在を希望する同胞と県内企業をつなぐ動きもある。
 05年に来日したベトナム人ドアン・ソン・トゥンさん(37)は約10年勤めた会社を退職し、21年3月、県内在住のベトナム人向けの会社を袋井市内に立ち上げた。本国の送り出し機関と連携しながら、技能実習生や就労者を企業に紹介する。通訳、翻訳業務も担う。
 ドアンさんは開業にあたり、熱意をアピールすることで、金融機関から運転資金を融資してもらったという。「ミスマッチに悩むベトナム人と日本企業は多く、力になりたい」と力を込める。
 移民問題に詳しい静岡文化芸術大の佐伯康考准教授(経済学)は「身近なニーズに応えるための外国人事業者は今後も増えていく」と見通し、「行政には起業に向けた法規則を外国語で伝えたり、同じ外国人の成功事例を分かりやすく伝えたりする取り組みが求められる」と指摘する。

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