テーマ : 福祉・介護

なぜ取材に応じたか、改めて尋ねました 「当事者深層、知ってほしい」「共生社会へ私が発信を」【障害者と生きる 番外編】

隼さんと一緒に自宅付近を散歩する渡辺裕之さん=1月下旬、静岡市清水区
隼さんと一緒に自宅付近を散歩する渡辺裕之さん=1月下旬、静岡市清水区

 息子の隼さん(24)の介護に1人で向き合う渡辺裕之さん(58)=静岡市清水区=に記者が初めて会ったのは、重症心身障害者を学ぶ勉強会。障害者と深い関わりのない人たちに交じって勉強会に参加した裕之さんは、記者に言った。
 「『共生社会』と口では言えますけどね。正直、現状のままでは実現は無理だと思っているんです」
 諦めの言葉だと受け取っていた。しかし、間違いだった。出会った日から約1年間取材を重ね、「なぜ取材に応じてくれたのか」と改めて尋ねた。返ってきたのは真剣な思い。その言葉は共生社会を目指して現状を変えようとする強い決意がこもったものだった。
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 -なぜ自分の人生を記事にしてもいいと思ったのか。抵抗は。
 「障害者の家族の生活とか、詳しい内面はまだあまり知られていないと思います。逆に当事者には話さない方々も多いのかもしれません。けど、私はみなさんに知ってほしいという思いが強い。ただ単に『大変だね』ではなく、何が大変で、何が普通と違うのかを知ってほしい。そのためには嫌とか怖いとか思わず、自分の生活を取り上げてもらうしかないと思いました」
 -生活を知ってほしいと思う理由は。
 「私自身も隼が障害者として生まれなければ、障害や福祉に興味を持たずに過ごしていたんだと思います。当事者にならないと分からないことは多いし、そもそも関心が薄い。でも共生社会を実現するためには、当事者でない方々にも深層を知ってもらうことは絶対条件だと思うんです。共生社会が実現してほしい。だからこそ、できることは自分の人生を発信することだと」
 -何度も壁にぶつかってきた。それでも歩んで来られたのは。
 「つらい。きつい。そう思うことは何度もあります。頑張れたのは、少しでも長く妻と息子と一緒にいたかったからです。家族を守りたいという思いが一番の原動力です」
 -どんな社会になることを望むか。
 「障害児を育てる親は誰でも一人になり得るし、いつ誰が障害児の親になるかも分かりません。今後、私のような境遇に立たされた人が出てきたとき、今よりも生きやすい社会になっていてほしいです。障害者とその家族が直面する問題はそれぞれ異なります。特例措置を行政は嫌うかもしれませんが、前例に当てはまらなかったり、セーフティーネットに引っかからなかったりした少数者たちを柔軟に救える環境がこれから整っていくことを願っています」

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