地盤/看板/かばんに苦慮 選挙運動のハンディ【地方議会と女性】

 立候補者がなるべくお金をかけずに選挙運動ができるよう、運動費の一部を公費で賄う制度がある。地方議員の“なり手不足”を背景に公費負担は拡充され、特に町村議員選挙に立候補するうえでの資金的なハードルは下がっている。それでも当選までに数十万~百万円単位といわれる“初期投資”は軽くないうえ、当選に欠かせない知名度の向上や支援者の確保と相まって、女性には大きな負担になっている。

初当選までに必要な活動と手続きの例
初当選までに必要な活動と手続きの例

 県内のシングルマザーの50代市議は「本気で当選するには、市民に自分の信条を伝える政治活動に専念するしかない」と、選挙の4年前に教育系の仕事を辞めた。「子ども政策を充実させる」との理念に基づいてボランティア団体を設立し、子ども食堂を運営した。
 選挙の2年前に、支持する政党事務員の職が舞い込んだ。8万円の月収で働きながら、党関係者や住民の集まりに顔を出し、奉仕にも努めた。「ぎりぎりの生活だったが、志を実現したい一心だった」と振り返る。
 元政治団体職員の20代女性市議は、立候補の10カ月前に県外から実家に戻り、名刺とチラシを手に、学区内や現職のいない都市部を千戸以上回った。インターホン越しに「困っていることはありませんか」と声を掛け、相談を受ければ市役所と掛け合い、再び訪問することもあった。
 選挙運動が近づくにつれて、多くの支援者が必要になる。各種申請書類に選挙カー、看板、立て札の準備、市町によって40~500カ所余りに及ぶポスター掲示。町議選なら800枚、政令市議選なら4千枚のはがき送付。その2倍の枚数のビラ頒布もできる。運動には、立候補者の家族や親族、友人、支援者が総出で関わることが多い。車上等運動員など一部を除くほぼ全員が手弁当。人員確保は、容易ではない。
 焼津市出身で地方選挙に詳しい東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授は、「地盤(支援組織)、看板(知名度)、かばん(資金)の3バンはいずれも、スタートラインからして女性の方が不利な傾向にある。社会そのものが男性優位だからだ」と言い切る。
 中でも知名度は、会社経営者や役場の管理職、自治会長など地域の要職と直結する。一方、家庭内で介護や育児に当たる時間が多い女性は、支援組織も資金も形成しにくい。「社会全体が男女平等になって初めて、男女同等に選挙に挑める」と強調する。

 <メモ>選挙公営制度 国と県、市町村が、金額の上限を設けて候補者の選挙運動費用の一部を負担する仕組み。各自治体が条例で対象を定めている。2020年の公職選挙法改正では、町村議員選で泡沫(ほうまつ)候補の乱立や売名を防ぐ供託金制度を新設する代わりに、選挙カー使用やビラ、ポスター作成が公費負担の対象となり、県市議員選と同様の選挙運動ができるようになった。17年の改正では県市議員選でビラ作成が公費負担の対象になっている。ただし、選挙で一定の得票数に達しなければ、立候補者への公費負担はされない。

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