「資金面、迷惑掛けない」3児の母、覚悟の借入金【地方議会と女性 第1章 立候補の壁㊦】 

 伊東市議の鈴木絢子さん(44)が立候補を決意したのは3年前。選挙は3カ月後に迫っていた。経験者の話から「100万円以上はかかる」と見込み、20代から積み立てた個人年金の掛け金を担保に、保険会社から200万円を借り入れた。「資金面で誰にも迷惑を掛けたくない。自分で責任を負う覚悟だった」

初めての政治活動と選挙運動を支えてくれたママ友たちと当時の苦労を振り返る鈴木絢子市議(右奥)=伊東市
初めての政治活動と選挙運動を支えてくれたママ友たちと当時の苦労を振り返る鈴木絢子市議(右奥)=伊東市

 家業で勤務先の水産物仲卸会社の一角に事務所を設け、後援会を立ち上げた。“ママ友”に支援を頼むと、「絢ちゃんがやることなら手伝う」と、快くボランティアを引き受けてくれた。
 それぞれが仕事や家事を終えた午後に集い、夕食までの時間を政治活動に充てた。信条を刷ったリーフレットを手に、近所の家々を千軒ほど回った。友人のうち数人は延べ1カ月にわたって事務所に詰め、立候補の届け出や後援会・選挙運動の収支報告の書類作成を担った。
 告示日までに友人が友人を呼び、支援者は約20人に増えた。市内171カ所のポスター掲示、選挙カーでの遊説など、全員で走り抜けた。投開票日の夜、テレビで「当選確実」の報を受け、泣きながら喜び合った。
 当選までに、スーツやかばんをはじめ、パソコンなどの事務機器や消耗品、看板、名刺、リーフレット、ビラなどを用意した。選挙カーの賃借と燃料、ポスター作成などにかかる代金は公費負担されるも、上限を超えた分は自費になる。当選後に戻った供託金30万円を除き、全部で120万円近くを費やした。市議と家業を兼職し、1年半で借入金の返済を終えた。
 「子どもたちがもっと伸び伸びと育つ環境をつくりたい」との志があっての立候補だったが、「公務に追われて3人のわが子に我慢を強いる結果になっては申し訳ない」と、決意するまで3カ月悩んだ。会社員として安定した収入があり家事育児に協力的な夫、自宅の隣に住み、いざというとき頼れる両親、働き続けられる家業―。「一つでも欠けていたら決断できなかった。私は恵まれていた」
 裾野市議6期目の内藤法子さん(69)は「育児や介護を懸命にこなすなど、日々生活に向き合う女性の経験は、政治を動かす大きな力になる」と確信している。
 半面、女性は男性よりも非正規労働者の割合が高く、選挙資金一つを取っても立候補には不利な環境にある。「選挙は社会を変えるための一歩。勇気を持って踏み出してほしいが、女性にはその前に乗り越えなければならない数々のハードルがある」と指摘する。

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