浜松の製茶機械会社 音楽のまちから世界へ レコード機器に参入 臨場感ある音質表現

 製茶機械製造販売の沢田工業(浜松市中区)が4月から、アナログレコードを再生する針と一体化した部品「カートリッジ」の販売に乗り出した。コロナ禍により自宅で音楽を楽しむ愛好家も多い中、50年以上オーディオを趣味としてきた沢田弘社長(70)は「音楽のまち浜松から、世界のファンに売り込みたい」と一念発起した。

世界初の技術を搭載したレコードカートリッジを確認する沢田弘社長(右)と宮司正之さん=3月下旬、浜松市中区
世界初の技術を搭載したレコードカートリッジを確認する沢田弘社長(右)と宮司正之さん=3月下旬、浜松市中区
宮司式MEMSカードリッジ(右)と専用アンプ
宮司式MEMSカードリッジ(右)と専用アンプ
世界初の技術を搭載したレコードカートリッジを確認する沢田弘社長(右)と宮司正之さん=3月下旬、浜松市中区
宮司式MEMSカードリッジ(右)と専用アンプ

 受注生産を始める製品は、スマートフォンにも使われる微小なMEMS(メムス)マイクで音を拾う世界初の技術を用いた「宮司式MEMSカートリッジ」と専用アンプ(税込み計55万円)。ダイナミックで臨場感ある音質を表現できるのが特長。沢田社長は「趣味を生かしたものづくりを実現させるのが夢だった」と語る。
 異業種参入のきっかけは6年ほど前に起業家カフェで、製品デザインなどを手掛ける宮司正之さん(44)=同市中区=と知り合ったこと。木や竹でオーディオ機器を作っていた宮司さんの試作品の音に可能性を感じ、新製品開発を支援してきた。
 一般的なカートリッジは、レコード針の振動を磁石とコイルで微弱な電気信号に変える。一方、新製品は針から出る音を数ミリ角の微小マイクで直接拾うため、音の再現性が高い。宮司さんは18年に新技術で特許を取得。オーディオ専門誌に掲載されて高評価を得ると、2人は20年ごろから商品化を目指した。
 宮司さんは「より良い音を愛好家に届けたい」と改良を重ね、沢田社長は地元企業に協力を依頼した。黒檀(こくたん)製のカバーや鏡面仕上げの専用アンプ台などは地元企業に委託し、デザインの魅力も磨き上げた。
 新製品は宮司さんが全て手作業で組み立て、月産5台の販売を目指す。沢田社長は「質の高い音を求めるレコード愛好家は世界中にいて、新たなカートリッジへの需要はある。より良い音を追求したい」と期待を膨らませる。

 <メモ>アナログレコードの人気は近年、復活しつつある。日本レコード協会によると、年間生産額は2010年に1億7千万円まで落ち込んだが、21年には前年比8割増の39億円と復調した。温かみのある音や、レコードに針を落として聞く手間が魅力として再評価されている。海外も同様の傾向にあり、米国では20年にレコードの売り上げがCDを上回り、21年には1986年以来の10億ドル(約1220億円)を超えた。

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