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県と市の緩い法令適用 大規模開発と判断せず【残土の闇 警告・伊豆山⑬/第2章 赤井谷の“攻防”⑤完】

 熱海市伊豆山で崩落した盛り土。その北側で進められていた宅地造成地も一体的な大規模開発と県や市が判断していれば、より強い規制が適用され、盛り土が造成されることはなかったかもしれない-。そんな見方がある。大規模開発と判断できなかった一因として当時、開発許可の権限が県から同市に移譲された直後だったことが浮かび上がる。

盛り土崩落の原因究明を進めている熱海市議会の百条委員会。出席した参考人から盛り土とその隣接地での開発を一体的に捉えるべきだったとの指摘がなされた=3月、同市役所
盛り土崩落の原因究明を進めている熱海市議会の百条委員会。出席した参考人から盛り土とその隣接地での開発を一体的に捉えるべきだったとの指摘がなされた=3月、同市役所

 「一体的な開発と捉え、関係法令を適用できなかったか」。3月、熱海市役所。市議会の調査特別委員会(百条委員会)に参考人として出席した土木設計エンジニアの清水浩氏(53)はそう指摘した。
 神奈川県小田原市の不動産管理会社は2007年3月、県土採取等規制条例に基づき、熱海市に届け出て盛り土を造成した。この条例の規制の弱さが、業者に残土搬入を許し崩落に至った要因ともみられている。
 一方、森林の開発面積が1ヘクタールを超えると森林法が適用され、事業者にはさまざまな防災対策を講じる必要が生じる。同社が届け出た面積は0・94ヘクタールで基準をわずかに下回ったが、1年前の06年4月、同社と密接に関係する別の業者が盛り土の北側隣接地で宅地造成を市に申請し許可されていた。
 合わせれば1ヘクタールを優に超える。同社は一帯で高級分譲地「ラグーナスパリゾート」を構想し、事業計画を市に説明していた。だが、業者や届け出の時期が異なることもあってか、県と市は別々の開発行為と判断。森林法が適用されれば逢初(あいぞめ)川の改修などが必要になったとみられる。「多大な労費がかかり事業として成立しなかった可能性が高い」。清水氏は強調する。
 同社が大規模開発の動きを加速させたのは、全国的な地方分権改革の流れで開発許可権限が県から同市に移譲された06年4月以降。市は新たに加わった法令運用に不慣れだったのか、業者が必要な手続きを行わずに林地開発をしていたことを見落とし、県から指摘を受けるなど不備が散見された。
 盛り土と宅地造成をなぜ一体的な開発と見なさなかったのか。市議会の百条委が県の各課に質疑を書面で行ったところ「(問題は感じても)他部署の業務に踏み込んで対応できない」と回答があったという。取材に対しても関係各課は「市からの情報がなければ把握できない」、「権限移譲後のことは市に聞いてほしい」との答えに終始した。熱海市は「検証中」としている。
 ずさんな工事を繰り返す業者に県や市が翻弄(ほんろう)され続けるなど、初期段階で強い規制を伴う法令適用ができなかったことは後々まで尾を引いた。土地の所有者が変わり、行政も人事異動で担当者が交代。赤井谷には「危険な盛り土」だけが残された。
 >防災工事、未完のまま 所有権移転で監視緩む【残土の闇 警告・伊豆山⑭/第3章 放置された10年①】

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