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見誤った大崩落のリスク 措置命令、直前で見送り【残土の闇 警告・伊豆山⑫/第2章 赤井谷の“攻防”④】

 神奈川県小田原市の不動産管理会社による違法な盛り土造成は2010年になっても続いた。入れ代わり立ち代わり複数の業者が木くずや廃棄物が混ざった土砂を運び込んだ。当時、本庁の森林部局や東部農林事務所にいた県職員は「県も熱海市も、これ以上、土砂を搬入させてはいけないと共通認識があった」と語る。関係機関で協議し、中止要請などの行政指導を行ったが改善は見られなかった。

熱海市が発出を検討した県土採取等規制条例に基づく措置命令の案。市の公文書には県の案も残っている
熱海市が発出を検討した県土採取等規制条例に基づく措置命令の案。市の公文書には県の案も残っている

 県によると、残土搬入には少なくとも8業者が関与していた。当時、現場での指導に当たった元熱海市職員は「(業者は)交代で対応し、『私たちに言われても』が決まり文句だった」とやり口を説明する。11年2月、所有権が現所有者に移ると、指導はより困難になった。不動産管理会社とは連絡が取りづらくなり、指導や要請に対しても回答がない状態が続いた。
 市は県土採取等規制条例に基づき、安全対策と土砂の搬入中止を求める措置命令の発出を県土地対策課と協議した。だが、結果的に措置命令は見送られることになる。なぜか-。後に県と市の行政対応が適切だったかを検証する第三者委員会でもこの点が大きな焦点になっている。市が措置命令を検討したのは11年6月。市の公文書には斉藤栄市長の名前が入った命令文の案が残っていて、市としては発出直前だったことが分かる。
 発災後の昨年10月、市の記者会見で斉藤市長は、当時の措置命令を直前で見送ったことについて「のり面の植栽など(業者による)安全対策が講じられたことが大きな理由だった」と強調した。しかし、11年10月の県の公文書には「残土処理場周辺に大きな崩落がある」との記録が残っていて、一定の安全が確保されたとする説明は説得力に乏しい。不動産管理会社が所有していた敷地内にある水道施設に配慮して市が命令の発出をためらったとの見方が一部にある。ただ、市は「命令と水道施設は別問題」と明確に否定している。
 一方、11年6月を境に、県の対応は低調になった。盛り土造成問題に関わっていた複数の県職員はこう話す。「あそこまで大きく崩れるとは思っていなかった」「所有者が変わって土砂の搬入が下火になり、防災対策がなされれば大丈夫だろうという雰囲気だった」
 今年3月下旬、第三者委は「大規模崩落を予想した関係者はほとんどいなかった」とする中間報告を公表した。加えて、人事異動に伴う引き継ぎが十分行われず、盛り土の危険性への認識が薄れていったとの見方も示した。難波喬司副知事は取材に「当時の県には市が措置命令を出せば大丈夫という認識があったのだろう。ただ、命令を出したかどうかを県として確認すべきだった」と述べた。
 >県と市の緩い法令適用 大規模開発と判断せず【残土の闇 警告・伊豆山⑬/第2章 赤井谷の“攻防”⑤完】

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