浜松市の行政区再編 サービス格差懸念 中山間地に寄り添って【解説・主張しずおか】

 浜松市が2022年5月に区割り案の最終決定を目指す行政区再編を巡り、天竜区北部地域の住民は行政サービスの格差をはじめ、さまざまな懸念を抱えている。市には地域住民に寄り添い、具体性を持って不安を解消する姿勢が求められる。

浜松市天竜区水窪町の中心部。北遠では過疎化や高齢化が進む=3月下旬、同町
浜松市天竜区水窪町の中心部。北遠では過疎化や高齢化が進む=3月下旬、同町
新3区案の人口と面積
新3区案の人口と面積
浜松市天竜区水窪町の中心部。北遠では過疎化や高齢化が進む=3月下旬、同町
新3区案の人口と面積

 市の区割り案で、C区(仮称)として単独で残る天竜区の人口は約2万7千人。市全体に占める割合は3%程度で、過疎化、高齢化が進む地域だ。一方で、面積は全市の約6割を占める。中、東、南、西各区と北区の一部を含むA区(同)の人口は約61万4千人、北区の大部分と浜北区を含むB区(同)が約15万8千人と顕著な差がある。
 天竜区北部の水窪町や佐久間町、龍山町など北遠地域には、産業振興や道路整備、災害被害箇所の早期復旧、学校の存続といった中山間地特有の課題が山積する。地元住民の間では再編後の区の在り方に期待と不安が交錯する。
 3月末まで水窪地区自治会連合会長を務めた守屋盛明さん(69)は、市議会特別委員会が現行の天竜区役所への配置を決めた「区政担当副市長」の役割に関心を寄せる。
 同副市長は天竜区に常駐し、林業の再生や防災など中山間地の諸課題について部局横断的に指示、調整する権限を持つ。「林業施策への注力に期待している。市上層部との交渉もうまくいくだろう」と希望を抱く。
 佐久間森林組合(佐久間町)の大石幸弘組合長(68)は「行政サービスを都市部の住民と格差のないやり方で提供してくれるのか、不安でありながら期待する部分もある」と複雑な心境を語る。
 龍山町の地場産品販売所「ドラゴンママ加工場」の玉本君枝代表(77)は「多くの住民は町中に行くよりも、長年住み慣れた地元に住み続けたい思いがある」と強調する。「高齢者の見守りや見回りの実施など、最後まで地域で暮らせる仕組みづくりを」と望む。
 北遠には長期間通行止めが続く道路や、デジタル化の波から取り残されている高齢者が多い。現状に危機感を抱く住民が、市へ改善の要望書を提出したり、地域の若年、壮年層が支援したりする動きもある。
 市にはこうした地域住民の声や動きを丁寧に拾い上げ、中山間地域の現状をしっかりと認識してもらいたい。再編後の行政サービスなどの在り方について、こまやかで柔軟な対応や施策を進める責任がある。

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