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特集 : 熱海土石流災害

張りぼてのリゾート構想 違反重ねた末「夢」頓挫【残土の闇 警告・伊豆山⑨/第2章 赤井谷の“攻防”①】

 盛り土が崩落した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部は、同地域に立地する別荘地の“北限”に当たる。その先もしばらくは雑木林を縫うように舗装道が続く。ただ路上には折れた木枝や石が散乱し、開発の滞りを物語っていた。さらに進むと山肌を切り開いて平らにした場所が広がった。ここも宅地造成されるはずだったのか。眼下には崩落した「赤井谷」。はるか先には相模湾の青い海がきらめいていた。

崩落した盛り土の元所有者の関係者が残したとみられる高級分譲地を案内する看板=3月下旬、熱海市伊豆山(画像の一部を加工しています)
崩落した盛り土の元所有者の関係者が残したとみられる高級分譲地を案内する看板=3月下旬、熱海市伊豆山(画像の一部を加工しています)

 崩落現場の盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社は、この一帯に高級リゾート建設を夢見ていた。「1区画2千万円以上で分譲する計画だった。すべて売れれば90億円以上になる試算だった」。同社代表の男性は今年1月、本紙の取材に明かした。「分譲地の名前はラグーナスパリゾートと決まっていた」とも語った。
 構想を裏付けるような証拠が、切り開いた場所近くの林の中で見つかった。「最上段パノラマ高級分譲地 2009年9月完成予定 好評予約受付中」。分譲を案内する看板で、記載されていた分譲地名は男性の言葉通りだった。問い合わせ先も同社だった。
 熱海市内の不動産関係者は「伊豆山は市内の中でも由緒ある場所として人気。土石流発生前までは高額で取引されていた」と語る。代表の男性は06年、宅地分譲の予定地や崩落した盛り土箇所など約35万坪を約13億円で購入したとされる。高級リゾート地の夢が実現すれば、多大な利益を手に入れていたかもしれない。
 だが、県が昨年10月に公開した公文書からは、構想が張りぼて同然だったことが浮かび上がる。宅地造成地は盛り土の北側に位置する。開発は、男性とつながりがある事業者が手掛けた。06年、市の許可を受けて開発に着手したが、08年4月に森林法違反の疑いが浮上した。許可申請が必要な面積を超えて、開発を行っていた。
 「既に伐採が完了し、造成工事もかなり進行している」「該当箇所は事業者が宅地造成を計画している箇所と一致していて、事前着手が疑われる」-。県の公開文書には、こうした記録が残されている。
 盛り土の箇所でも07年5月、同様の違反が発覚した。さらに09年6月には工期が切れたにもかかわらず延長申請せず、工事を続けていた。
 宅地造成地では、事業者が県の指導に従い現場を復旧後、市に開発許可を申請し許可を受けた。だが、資金繰りが悪化したとみられ08年10月ごろから事業が停滞し、同社は解散した。現在に至るまで目立った動きはない。
 一方、盛り土の造成地では、その後も小田原市の不動産管理会社がずさんな工事を再三にわたって行い、県や市とせめぎ合いを繰り広げていくことになる。
      ◇ 
 盛り土が崩れた熱海市伊豆山の谷は地元で「赤井谷」と呼ばれていた。同市によると、赤井は神仏に供える水をくみ取っていた場所「閼伽井(あかい)」が由来。逢初川の源流で、近くには伊豆山神社の本宮があったことと関係しているともされる。神聖な谷を巡ってどのような開発行為が行われ、行政はどう対応していたのか-。業者と行政の“攻防”に迫る。
 >リゾート開発巡り行政揺さぶり 水道施設、交渉の「道具」に【残土の闇 警告・伊豆山⑩/第2章 赤井谷の“攻防”②】

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