テーマ : 福祉・介護

木製車いす用体重計を製作 認知症、働ける場所提供 「木工房いつでもゆめを」代表/稲葉修氏【本音インタビュー】

 認知症当事者が従業員として働く富士宮市の有限会社「木工房いつでもゆめを」。設立8年で、主力商品の木製車いす用体重計は累計販売500台を突破した。認知症になっても働き続けられる「居場所」のつくり方を聞いた。

稲葉修氏
稲葉修氏

 -設立の経緯は。
 「2011年ごろ、認知症の当事者の講演で『仕事がほしい。居場所がない』との言葉を聞いたことがきっかけ。その当時、経営しているグループホームに、考案して自作した車いす用体重計の基本形があった。車いす用体重計は介護用品の谷間。鉄製の既存製品は高額で場所を取る。小さい事業所ではなかなか買えないし、使いにくい。小型軽量の木製製品を作れば商売になると思った。車いす用体重計があったことで認知症の方が働く場所として木工房の立ち上げに結び付いた」
 -会社としてどう回しているのか。
 「これまでに延べ20人の認知症当事者を雇用してきた。認知症の方は頼んだ仕事の7割ぐらいは自分でこなせる。残り3割を僕らが手を出すことで会社は回っていく。認知症になると新しいことを覚えられないと思われがちだが、初めての仕事でも挑戦できて、上達もしていく。個人差はもちろんあるが、いろいろ試してもらっている。車いす用体重計が稼いでくれていることも大きい。従業員の当事者たちが広告塔となり、講演活動の際にチラシを配って営業につなげてくれている」
 -認知症当事者との向き合い方は。
 「弱いところばかり見てしまいがちだけれども、とにかく人間として対等であることを意識して付き合うことが必要。そうすることで当事者一人一人のできること、できないことが見えてくる。習うより慣れる、理屈ではないと思っている。社会の中で居場所を分けてしまうと、存在自体が見えなくなってしまう。当たり前に目の前にいるということが大切だ」
 -今後の課題は。
 「認知症当事者の家族に対する支援が欠かせないと感じている。家族がつい、面倒を見すぎてしまうことがある。周囲が本人を否定したり、無意識に責め続けたりしてしまうことで、暴力的になってしまう場合がある。認知症そのものは穏やかで、暴力的な病気ではない。昨年9月から、新たに家族に対する相談事業も始めた。認知症とうまく付き合っていく方法を広げたい」

 いなば・おさむ 富士宮市に28年勤務。うち22年は福祉部門を歩んできた。退職後、2003年にグループホームを設立。13年12月から「木工房いつでもゆめを」を運営している。70歳。

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