追っかけわたしの特集

特集 : 熱海土石流災害

社説(3月16日)盛り土規制強化 国県連携で対策確実に

 熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流を踏まえ、政府は盛り土規制強化のための法案を閣議決定した。指定区域内の盛り土を許可制とし、違反を厳罰化するなどで、今国会での成立と来年夏の施行を目指す。
 静岡県も盛り土に特化した条例の制定を進めるほか、通報窓口「盛り土110番」を開設した。来年度は関連業務を一元的に担う盛り土対策課も新設するなど、監視や規制の強化に本腰を入れている。国と連携し、実効性が高い対策を確実に講じるべきだ。
 災害関連死を含め27人が死亡、1人が行方不明になっている伊豆山の土石流は、不適切に造成された起点の盛り土が被害を拡大したとされる。盛り土は現場の土地用途によって適用法律が異なり、規制が緩い自治体で危険な造成が行われるケースが多い。
 全国知事会は一律の基準で規制する法整備を国に求めてきた。伊豆山でも盛り土内から神奈川県内自治体の指定ごみ袋が見つかり、県境を越えて搬入された可能性が高い。法整備のタイミングはこれまでに何度もあったはずだ。

 法案は宅地造成等規制法を改称し、土地の用途にかかわらず適用するよう抜本改正した。都道府県などが盛り土の崩壊で住宅に被害が出る可能性がある場所を規制区域に指定。区域内の宅地造成などは、排水設備などの要件を満たさなければ許可しない。自治体は工事途中や完了時に安全性を検査し、問題があれば改善命令を出す。
 現行法では罰金上限が個人、法人を問わず50万円にとどまるが、法案では無許可造成や是正命令違反について個人は1千万円、法人は3億円にまで引き上げる。
 法律の実効性を高める上で重要なのは、実務を担う自治体の対応力だ。地方では土木系の専門職員が慢性的に不足している。政府による人材の確保や育成面の支援が欠かせない。自治体任せにしてはならない。
 建設工事に伴い発生する「建設残土」は産業廃棄物ではないため、原則再利用することになっている。だが、国土交通省は2018年度に発生した2億9千万立方メートルのうち、2割強の約6千万立方メートルが有効利用されず、残土処分場などに搬出されたと推計している。
 活用されない残土の一部が不適切な盛り土になっているという構図がある。法整備に併せて急ぎたいのは、発生場所から最終処分先までを追跡可能にする「トレーサビリティーシステム」の導入だ。国交省は既に国発注の工事で実証実験を開始している。課題を検証し、義務化を含め拡大につなげてほしい。

 伊豆山の土石流を受けて政府が実施した全国の盛り土総点検では、昨年11月末時点で約1400カ所で法令や防災上の問題が見つかった。十分な法整備を怠ったことを含め、政府の不作為の表れではないか。
 県建設業協会によると、残土処分場は慢性的に不足している。規制強化により残土処分場の需要が高まり、処分費用の高騰につながることも想定される。そうなった時、適正処理は守られるのか。政府が方針を示した発生者責任の明確化はどこまで可能か。抜け道を許さないという毅然[きぜん]とした対応が欠かせない。
 県は7月の新条例施行を目指す。地下水への影響など環境基準の観点から盛り土に用いることができない土砂の例外規定についても、要綱を定めて明確化する。危険性の高い盛り土を常時監視する遠隔カメラを設置し、パトロールも強化する方針だ。
 伊豆山の土石流では、悪質な開発行為を繰り返す業者に市が措置命令の発出を見送ったり、県内部の連携がとれていなかったりしていたことが判明している。行政対応の問題点の徹底検証が必要だ。人災ともいえる悲劇を繰り返してはならない。

いい茶0

熱海土石流災害の記事一覧

他の追っかけを読む