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特集 : 福祉・介護

医療保険に日数制限 若年層“リハビリ難民”悲鳴「現状知って」

 脳出血の後遺症で左半身が不自由になり、リハビリを続けながら子育てをしている女性がいる。富士市の元看護師大石来実さん(32)。現在は医療保険で受けられるリハビリの期限を医師の判断で延長しているが、いずれは自費診療となり大きな負担がのしかかる。満足なリハビリを受けることができない人たちは“リハビリ難民”とも呼ばれ、大石さんは「介護保険の対象に当たらない若い人が苦しんでいる現状を知ってほしい」と訴える。

リハビリによってベビーカーを押せるようになった大石来実さん。家族の支えを受けながら泰輝君の子育てに奮闘する=1月下旬、富士市内
リハビリによってベビーカーを押せるようになった大石来実さん。家族の支えを受けながら泰輝君の子育てに奮闘する=1月下旬、富士市内

 大石さんの生活が一変したのは昨年1月。起床後、体の左側に「ビリビリと電気が走った感覚」を受けると、そのまま倒れて救急搬送された。脳内の動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながって塊となった「脳動静脈奇形」が破れたことによる脳出血だった。
 当時、おなかには長男泰輝君(1)を身ごもっていた。妊娠して血液量が増えたことで奇形が破裂した。「分娩(ぶんべん)中に発症したら私は死んでいた可能性が高い。泰輝が知らせて助けてくれたんだと思う」と涙をぬぐう。
 約5カ月間のリハビリ入院では左半身の機能改善だけでなく、足を使ったおむつ替えや片手で行う授乳など、左手足が不自由でもできる子育ての方法を身に付けた。今も週1~2回リハビリに通い、ベビーカーを押して歩いたり洗濯物を干したりと着実にできる範囲が広がった。足の装具は軽度な物に変わり、状態は良い経過をたどっている。
 「家族の支えがあってここまで頑張ることができた。リハビリは子どものためにも続けたい」と力を込める大石さん。いずれは看護師の経験を生かし、再び医療に貢献したい意思を持つ。
 ただ、医療保険で受けられるリハビリはいつ延長措置が終わるか分からない状態だ。「介護保険に該当しない若い世代は自費で続けるかやめるかの選択になる。経済的に断念する人も少なくない」と医療環境の改善を願わずにはいられない。

 ■機能改善に個人差 区切り「一律」難しさも
 医療保険で受けられるリハビリは医療費抑制を狙った2006年4月の診療報酬改定により、それまでの無制限から日数制限が設けられた。脳血管疾患は180日、骨折など運動器の疾患は150日など疾患別に定められていて、介護保険サービスが受けられない40歳未満の若年者にとって制度上の課題になっている。
 リハビリによる機能改善は個人差が大きく、一律に日数を区切ることは難しいとされる。期限後も医師が必要と判断した場合には延長が認められるが、浜松市リハビリテーション病院の藤島一郎院長は「国民皆保険の社会で抜け落ちている人がいると言えば、その通り。必要な人に保険対応できるようにすべき」と指摘する。一方で「医療資源は有限。トリアージの必要があるのも事実」と話す。
 日数制限は患者の目標になる側面があり、社会生活を送ること自体がリハビリにつながる部分もあるという。藤島院長はリハビリが機能回復や維持だけでなく「専門職が患者の精神的な支えになるなど、いろいろな効果を持つ」と説明する。

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