地元への説明「適正」 JR社長、ルート選定時【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、JR東海の金子慎社長は9日、名古屋市内で開いた定例記者会見で、南アルプス(大井川上流域)をトンネルで貫通するルートを選定した際の水資源や生態系に与える影響の地元説明について「環境影響評価(アセスメント)で情報を開示しながら、法律にのっとってプロセスが進められた。適正に行われた」との認識を示した。
 ルート選定については環境アセスの過程に触れ「リニアの技術的な性格、制約、地質・地形の問題、環境の問題を考え合わせて、こういう形でルートを選定したと記載し、環境アセスを進めてきた」と説明した。
 環境アセス配慮書は山梨県内の一部の山地で高圧湧水の恐れを理由にルートを回避したと記した一方、大井川上流域に大量湧水が発生する恐れがあることは記載されず、ルートも回避されなかった。この理由については「広報部門が答える。私に聞かれても困る」と言及を避けた。
 川勝平太知事は7日の記者会見で、JRや国土交通省からルート選定時に水資源や生態系への影響に関する説明は「皆無だった。(ルート選定の経緯を)正確に知りたい」と述べていた。

 ■一問一答「利水者の疑問に答える」
 9日に行われた金子慎JR東海社長の定例記者会見での主なやりとりは次の通り。
 ―難波喬司副知事が情報開示に消極的なJRの社風が問題長期化の一因になっていると指摘したが、情報開示の姿勢をどのように改善するつもりか。
 「国土交通省専門家会議の中間報告で、私どもの役割として、地域の利水者に分かりやすい形で説明をしながら、疑問や懸念に答えていくということを言われた。中下流域の水量への影響が極めて小さいという水収支解析の結果は不確実性を伴うので現地でモニタリングをする。必要なリスク対策とセットで、地域と共有するのが役割と書かれている。役割をしっかり果たしていかないといけない」
 ―川勝平太知事が記者会見で、ルート選定時、水資源や生態系への影響に関する説明がなかったと述べた。なぜ、選定段階で地元に説明しなかったのか。
 「ルートを決めるプロセスは環境影響評価(アセスメント)の場で順に決定していく。ある種、情報を開示しながら、法律にのっとってプロセスが進められたと承知している」
 ―環境アセス配慮書では山梨県の巨摩山地で高圧湧水発生の恐れを理由にルートを迂回(うかい)する一方、大井川上流域で大量湧水発生の恐れは記載していない。配慮書に記載がなければ、説明しなかったと受け止めていいのか。
 「手続きの記載について、この場で聞かれてもちょっと答えられない。社長会見で細かな回答をするのは不適切だ」

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