津波対策の高台移転 新居1軒目完成、移住始まる 沼津市内浦重須地区【#311jp】

 東日本大震災をきっかけに、津波被害の未然防止のため高台への集団移転を模索した沼津市内浦重須地区。経済的負担などを理由に希望者が減り集団移転には至らなかったが、本年度、高台に1軒目の新居が完成。移転が目に見える形で始まった。

高台の新居の前で、移転の経緯を振り返る大沼さん=3月6日、沼津市内浦重須
高台の新居の前で、移転の経緯を振り返る大沼さん=3月6日、沼津市内浦重須
住宅新築が進む高台(手前)=6日、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
住宅新築が進む高台(手前)=6日、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
高台の新居の前で、移転の経緯を振り返る大沼さん=3月6日、沼津市内浦重須
住宅新築が進む高台(手前)=6日、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 海抜60メートルの高台。ミカン畑だった土地を整備して生み出した2500平方メートルの住宅用地はまだほとんどが更地だが、真新しい住宅が1軒建っている。家の主は地元の造船業大沼伸剛さん(49)だ。
 大沼さんは祖父の代から地元で造船業を営んできた。旧宅と併設した造船所のすぐ前には海が広がり、高潮時には作業場に海水が流れ込むことも。「津波が来たら家も仕事もだめになる」。震災後に移転を決意。昨夏に高台の新居が完成して以降は海の前の造船所で働き、高台の新居で暮らす日々を送る。
 「この年で住宅ローンを組むことになるとは思わなかった」と移転の苦労を振り返るが、高台での新生活の安心感を語る妻美由紀さん(49)を見詰めるまなざしは穏やかだ。
 津波に襲われた歴史があり、防災意識の高かった地区。震災後には国の防災集団移転促進事業の適用を念頭に約80世帯が高台移転を模索したが、経済的負担や高齢を理由に希望者は減少。現時点で移転を決めたのは7世帯にとどまる。
 高台の大沼さんの新居周辺でも住宅新築に向けた準備が進む。「自治会をどうするかなど課題も多いが、家業を継ぐと言ってくれている子どもたちの世代にここでの生活を残したい」。大沼さんは言葉に力を込める。

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