浜松の手芸専門店「とりい」3月21日閉店 圧倒的品ぞろえで信頼、愛された130年

 浜松市中心街の中区田町で1886(明治19)年に創業した老舗手芸専門店「とりい」(鈴木玄社長)が21日で閉店する。1万点に及ぶボタンなど豊富な品ぞろえで愛好家から親しまれてきたが、衣料の低価格化が進み、服を自分で繕う習慣が薄れた。経営状況が厳しくなり、130年超の歴史に幕を下ろす。

3月21日に閉店する手芸専門店「とりい」=2月下旬、浜松市中区
3月21日に閉店する手芸専門店「とりい」=2月下旬、浜松市中区
1万点に及ぶボタンなど、幅広い手芸用品をそろえる店内。閉店後もインターネット販売は続ける
1万点に及ぶボタンなど、幅広い手芸用品をそろえる店内。閉店後もインターネット販売は続ける
豊富な品ぞろえで愛好家から親しまれてきた店内=浜松市中区の手芸専門店「とりい」
豊富な品ぞろえで愛好家から親しまれてきた店内=浜松市中区の手芸専門店「とりい」
様々の柄や大きさのボタン=浜松市中区の手芸専門店「とりい」
様々の柄や大きさのボタン=浜松市中区の手芸専門店「とりい」
3月21日に閉店する手芸専門店「とりい」=2月下旬、浜松市中区
1万点に及ぶボタンなど、幅広い手芸用品をそろえる店内。閉店後もインターネット販売は続ける
豊富な品ぞろえで愛好家から親しまれてきた店内=浜松市中区の手芸専門店「とりい」
様々の柄や大きさのボタン=浜松市中区の手芸専門店「とりい」

 5代目の鈴木社長(50)によると、鳥居琴治氏が紳士服の仕立屋として創業し、1907年に鈴木社長の曽祖父が経営を引き継いだ。戦後は生地やボタンなどの小売りを手掛けるようになり、バブル期の1980年代後半ごろには市内に複数店を構えた。
 86年に開店した今の店舗は「お客さんの困りごとに1カ所で応えられるのが強み」(鈴木社長)。洋裁や手編み、刺しゅうなど8万種類の商品が並ぶ。特にボタンは1個数十円のシャツ用から、ガラスの装飾がちりばめられた1個8千円以上の婦人服用など多彩な在庫をそろえる。
 18歳の時から勤める金子彰男店長(74)は「全盛のころはボタンの相談だけで客の列ができるほどだった」と懐かしむ。だが、90年代から安価な衣服が出回ると、家庭で服を直して長く着続ける習慣は薄れ、売り上げは減少。新型コロナウイルス禍の外出自粛で、さらに客足が減った。
 店は閉じるが、会社は存続させて数百種類に及ぶ国内や欧州の刺しゅうキットを中心としたインターネット販売は続ける。鈴木社長は「ジャンルは限られるが、とりいの名を残しつつ、手づくりの魅力を今後も伝えたい」と話す。

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