御前崎市財政悪化 “厚遇”黄信号 企業立地の促進【22年度予算案/遠州7市町④】
御前崎市は2022年度当初予算案に企業立地促進事業費補助金として1億3600万円を計上した。工場を新築したり、機械設備を購入したりする企業に、用地取得費など経費の一部を補助する。22年度の補助対象は御前崎港の臨港地区に再生プラスチックの製造工場を構えた「プラニック」。敷地面積は約2万3千平方メートルで、夏にも本格稼働する。

同社の山下晴道取締役は「進出先の候補地は50カ所ぐらいあった」と明かす。現在の場所を選んだのは、原料の使用済みプラスチックの集荷に港を利用することに加え、「他市に比べて手厚い」(山下取締役)補助も決め手だったという。
市の企業優遇制度には同補助金の他、年1億円を限度に固定資産税の同額を一定期間交付し、実質肩代わりする補助金など7種類がある。原子力発電所の立地市ならではの電気料金の割引措置もあり、市企業港湾室は「今後も電源地域の優位性を生かして誘致に努めたい」としている。
ただ、財政状況の悪化で現在の制度を維持できるかは不透明だ。20年11月に市がまとめた地方版総合戦略の事業評価書では既に、企業への経済支援について「従来のような潤沢な補助制度は維持できない状況」と言及している。
静岡経済研究所の玉置実主席研究員は、新型コロナウイルス禍の企業の設備投資などの動向について「感染拡大と収束の繰り返しで景気の見通しが立て難く、慎重姿勢を取る企業が多い」とみる。誘致を図る自治体には「人員確保やアクセス道路の整備に加え、感染対策など幅広い支援が求められる」と指摘する。
今まで以上に企業を支える態勢が誘致戦略に欠かせない中、市の懐事情は補助制度を見直さざるを得ないほど厳しくなっている。柳沢重夫市長は当初予算案の発表会見で、新たな歳入確保策に「企業立地による固定資産税の増加や雇用創出」を挙げた。今後の取り組みに本気度が問われる。