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トンネル湧水 静岡県外流出 JR東海内専門家会議で議論なし【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題でネックになっている工事期間中のトンネル湧水静岡県外流出。JR東海が7年前に減水対策を検討した社内専門家会議「大井川水資源検討委員会」で議論されていなかったことが1日までに、JRやオブザーバーだった県への取材で分かった。県外流出の要因になった県境付近の大規模破砕帯(水を通しやすい地層)の存在は同会議の2年ほど前に作成された調査資料で判明しており、対策の議論に生かされなかった可能性がある。

大井川流域の水が富士川や天竜川の流域に流出する状況/トンネル掘削の方法と湧水の流れ
大井川流域の水が富士川や天竜川の流域に流出する状況/トンネル掘削の方法と湧水の流れ
トンネル湧水の県外流出を巡るJR東海の主な動き
トンネル湧水の県外流出を巡るJR東海の主な動き
大井川流域の水が富士川や天竜川の流域に流出する状況/トンネル掘削の方法と湧水の流れ
トンネル湧水の県外流出を巡るJR東海の主な動き

 同会議は、環境影響評価(アセスメント)の国土交通相意見を受けて、JRが2014年12月から15年11月にかけて4回開き、トンネル工学や水文学などの専門家7人が湧水を大井川に戻す導水路トンネルなどの位置を議論した。
 しかし、JRが公表した議事概要に湧水県外流出に関する記載はない。オブザーバーとして出席した県の担当者も「当時は湧水全量戻しに焦点が当たっておらず、会議で工区設定や湧水県外流出の議論はなかった」としている。
 湧水県外流出の問題はJRの地質調査で判明した大規模な破砕帯の存在が背景にある。破砕帯による工事の危険性を考慮し、JRが設定した工区の境目が県境とずれたのが発端になった。
 JRの委託を受けた地質調査会社は13年3月、この破砕帯に関し「大量湧水の発生が懸念される」と当時、非公表だった調査資料に記していた。JRは15年3月、山梨工区の契約関連文書に工区の距離を記載済みで、同年3月以前に工区は設定されていた。JRに対し地質調査や工区設定の時期などの取材を申し込んだが、現時点で「回答は致しかねる」などとし、明確な説明は得られていない。
 金子慎社長は今年1月の記者会見で、県有識者会議で県境と工区設定のずれが問題視された18年11月よりも前に、工事関係者は湧水の県外流出を認識していたとし「(県側と)考え方に齟齬(そご)があった」と述べていた。

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