アオイブリューイング(静岡市葵区)星野賢人さん 倒産から1年で復活「恩返しを」【しずおかクラフトビール新世代㉑】

 運営会社の倒産に伴う醸造停止から1年。22日、復活なったアオイブリューイング(静岡市葵区)のビール3銘柄が市内3店舗で飲めるようになった。

ビールを詰めるケグ(容器)を洗浄する星野賢人さん=2月中旬、静岡市葵区のアオイブリューイング
ビールを詰めるケグ(容器)を洗浄する星野賢人さん=2月中旬、静岡市葵区のアオイブリューイング
左から「ゴールデンエール」「IPA」
左から「ゴールデンエール」「IPA」
ビールを詰めるケグ(容器)を洗浄する星野賢人さん=2月中旬、静岡市葵区のアオイブリューイング
左から「ゴールデンエール」「IPA」

 2014年から稼働したかつての「アオイ」の代表的ブランドであるゴールデンエール、IPA、アルトを同じレシピで再現。同区のビアスタンド「ザ・パイント・シャック」では、午前11時の開店を待ちかねたように注文するファンもいた。アオイの醸造長星野賢人さん(35)は「ファンの期待が大きくプレッシャーを感じていたが、第1弾が完成してほっとした。醸造を重ね、品質をさらに高めていきたい」と気を引き締めた。
 星野さんがアオイに入ったのは20年10月。広島市でのビール醸造家が集まる研修会でアオイの醸造長に誘われ、福岡市の醸造所から移籍したが、21年2月に事業停止。入社後4カ月の悲劇はさすがにこたえたという。
 21年夏、醸造所の立ち上げメンバーで現在はビアパブ「グローストック」を運営する福島英紀さん(39)が事業を継承することになり、すぐに手を上げた。「縁もゆかりもない静岡に招かれ、仲間に入れてもらったことに恩を感じていた。自分が動かなければブランドが残らないと思った」
 東京都世田谷区出身の星野さん。20代の頃は都内の配送大手で働いていたが、三十路[みそじ]を超え「本当にやりたいこと」を求めて退社した。
 自転車でビール醸造所を巡り、自らを売り込んだ。東京をたち、北陸から岡山に抜けて広島、福岡へ。日本地ビール協会発行の冊子を頼りに醸造所を30カ所以上訪ね「雇ってもらえませんか」と直談判を繰り返した。2カ月の自転車行脚で巡り合ったのが福岡市西区の「杉能舎」だった。3年間、醸造家としての礎を築いた。
 クラフトビールメーカーがひしめく静岡で、スキルアップを目指す。「お客さんのレベルが他の地域と全然違う。味や品質について厳しい意見も出る」。当面は定番の安定供給が第一だが、目指すビールの姿が胸にある。「飲み口がきれいで2杯、3杯と重ねられるビール。アオイが創業時から大切にしてきたスタイルを継承したい」

 ■IPA
 ■ゴールデンエール

 欧州スタイルを指向するアオイブリューイング。「IPA」は、ホップ由来のかんきつ系の香りが特徴の米国のIPAとは異なり、モルトの甘みを前面に打ち出した。滑らかな飲み口、穏やかな苦みも特徴だ。
 「ゴールデンエール」も、アオイの代名詞的ブランド。酵母とホップが複雑に絡み合ったアロマが楽しい。すっきりした味わいで切れが良く、飲み飽きしない。
 両ブランドとも当面は缶や瓶での発売はしない。「ザ・パイント・シャック」「グローストック」など市内3カ所で提供する。

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