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土地購入男性の構想 リゾートの夢に突き進む【残土の闇 警告・伊豆山⑧/第1章 変わりゆく聖地⑤完】

 神奈川県小田原市の不動産管理会社(B社)の男性代表(71)は、リゾート構想の夢を知人に打ち明けるのが好きだった。食事中に割り箸で建築物の模型を組み立ててみせ、熱っぽく解説することもあった。昔から多弁で、「人を引きつける不思議な話術があった」と話す関係者は多い。

盛り土を起点に発生した大規模土石流の現場一帯。広大な土地を不動産管理会社が購入した直後、盛り土の造成は始まった=2021年9月(本社ヘリ「ジェリコ1号」より撮影)
盛り土を起点に発生した大規模土石流の現場一帯。広大な土地を不動産管理会社が購入した直後、盛り土の造成は始まった=2021年9月(本社ヘリ「ジェリコ1号」より撮影)

 2006年に買った熱海市伊豆山の約35万坪(約1・2平方キロメートル)の土地にも「本気で別荘地を造る計画だった」(元従業員)。代表は本紙の取材にも関係資料を示しながら「分譲地の販売総額は90億円以上と試算していた。ヘリポート付きでかっこいいゲートも作って、リゾート地の名前も決まっていた」と構想の一端を打ち明けた。
 複数の関係者によると、代表が不動産業に参入するまでには紆余(うよ)曲折があった。学生時代に励んだサッカーを子どもに教えたり、キャンプなど野外教室の魅力を伝える事業に傾注したりとさまざまな仕事に手を広げるうちに、いつしか同和問題に関係した活動にも携わるようになった。1990年代までに青年部のような組織を地元に創設し、支部を小田原市外に拡大。著名な外国人タレントを招いた講演会も実現させた。
 主立った組織がないとみた東北に進出を試みるなど周囲が驚く行動力で全国を回った。ついには神奈川県内の最高責任者とされてきた年長の男性に代わり、トップの座に就いた。今も自宅に「人権図書館」と称したスペースを設け、数百冊の関連書籍を並べる。取材に「人権活動は昔も今も弱者や困っている人のため。行政職員へのどう喝や威圧なんて、そもそも全くやる必要性がない」と語った。
 小田原市内の建設業関係者(71)によると、不動産業への本格参入は遅くとも90年代。交渉術を得意として市への許認可申請を増やし、人脈も駆使して受注を勝ち取ったとされる。代表は取材にも「僕は小田原市には顔がある」と話したことがある。2000年ごろ、新たな拠点になると目を付けたのが別荘地の熱海だった。
 熱海市伊豆山にはB社が土地購入後の07年ごろから連日、ダンプカーが行き交うようになった。静岡県警が22年1月末に家宅捜索した神奈川県二宮町の建設会社の関連業者を含め、個人事業主を中心に三十数社のダンプカーが出入りしていた可能性がある。特に濃霧の日や朝方、過積載の車両は急増し、搬出元不明な土砂が山積みにされた。
 闇夜に紛れるように次々運び込まれていった土砂や建設残土。熱海市の元幹部の一人は悔やむ。「土を盛られる前に止めておかないと業者にあの手この手で続けられることになる。この段階で後手後手に回ってしまった」
 >張りぼてのリゾート構想 違反重ねた末「夢」頓挫【残土の闇 警告・伊豆山⑨/第2章 赤井谷の“攻防”①】

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