抗原検査、より高精度に 浜松医大グループ新手法発表 1件30分、迅速な判定に期待
浜松医科大(浜松市東区)の河崎秀陽准教授らの研究グループが15日、PCR検査に匹敵する高精度の新型コロナウイルス抗原検査の手法を発表した。市販の抗原検査キットに同大発のベンチャー企業が開発した特殊溶液を垂らし、卓上電子顕微鏡で観察する。1件30分程度で判定でき、数時間はかかるPCR検査より大幅に迅速化した。感染者の急増で検査をせずに症状で判定する「みなし陽性」がやむなく導入される中、浜松発の技術で新たな検査を提案する。
新たな高精度の検査手法は同日、国際学術誌バイオメディシンズ電子版に掲載された。研究グループは、同大発ベンチャーが電子顕微鏡での生物観察用に開発した表面保護被膜「ナノスーツ」の溶液を使うことで顕微鏡画像を鮮明化。コロナ感染有無の判定用プレートの中で、抗体を付けた金属ナノ粒子がウイルス抗原と結合した数を電子顕微鏡で数える定量診断の手法を導き出した。
市販の抗原検査キットは、綿棒で鼻の穴やその奥の鼻咽頭の粘膜を採取して判定用プレートに注入すると、15~30分で陽性、陰性を示す線が浮かび出る。ただ、感度がやや低く、検体のウイルス抗原量が少ないと、陽性でも線が鮮明に現れずに陰性と判定される「偽陰性」のケースがある。新たな検査手法では、目視で偽陰性とみなされた検体の多くを陽性として検出した。
研究グループは2020年12月から21年10月まで、同大病院と浜松医療センター(中区)でコロナ感染疑いの患者45人から計176検体を採取した。患者に①PCR検査②市販キットを目視判定した抗原検査③市販キットを電子顕微鏡で観察した高感度の抗原検査-を実施し、比較した。
PCR検査で陽性と判定された患者のうち、目視の抗原検査では43・3%しか検出できなかったが、高感度抗原検査では86・7%を検出したという。
河崎准教授は「全自動で判定する技術開発が進めば、開業医や薬局での検査サービス展開や、救急医療、入国管理などでの迅速な判定に活用できる可能性がある」と期待し、今後、企業とともに実用化を目指すという。