コロナで観光業大打撃 デジタル活用で誘客強化【22年度浜松市予算案㊦】
「お支払いは『はまなこペイ』のポイントでもできますよ」-。浜名湖に面した舘山寺温泉(浜松市西区)の飲食店「手打ちうどん権太」で、店主の小山和孝さん(46)の妻みどりさん(38)が来店客に声を掛けた。
はまなこペイは舘山寺温泉観光協会が観光庁の補助を受け、2月20日まで実証実験中の「デジタル地域通貨」。携帯電話会社などのスマートフォン決済と同様にキャッシュレスで会計できる。地域に入ってきたお金を流出させず、地域内で循環させるのが狙いだ。
アプリをダウンロードし、アンケートに答えた宿泊客にポイント千円分を贈り、追加チャージした客には入金額以上のポイントを上乗せする。和孝さんは1月に導入した同店では「客の評判は良く、飲食店にとってもありがたい」と話す。同協会幹部は「マーケティングに基づく誘客戦略の立案にも役立つ」とメリットを強調する。
コロナ禍の影響で、2020年度の同市の観光交流客数は前年度比48・9%減の約994万人、宿泊客数もほぼ半減の約109万人と大打撃を受けた。21年度も厳しい状況が続き、「ツアーや訪日外国人客の減少が響いている」(市観光・シティプロモーション課の担当者)という。
団体客が落ち込んでいる分、若い世代をはじめとした個人客の取り込み強化が欠かせない。誘客の柱の一つが、デジタル技術を生かした振興策だ。
市は22年度、はまなこペイのようなデジタル地域通貨の導入可能性の調査に乗り出す。当初予算案に200万円を計上し、観光地の活性化だけでなく、健康増進やボランティアの活動にポイント付与するなど幅広い運用の形を検討していく。
ほかにもデジタル活用による誘客策として、国内宿泊予約サイトの利用者に割引クーポンを発行するキャンペーンに2億円を投じる。ユーチューバーによる地元食材の「食レポ」や観光地巡りなどの動画も制作する。
舘山寺温泉観光協会の太田昌弘事務局長(65)は「旅の在り方は急速に変化してきている。新しい技術をうまく取り入れながら、観光業の立て直しを実現してほしい」と効果に期待する。