社説(2月11日)静岡県新年度予算案 DXを行革につなげよ

 静岡県が発表した2022年度当初予算案は、一般会計に前年度当初比4・2%増の1兆3644億円を計上し、過去最大となった。新型コロナウイルス対策など安全・安心な地域づくりとともに、ポストコロナ時代を見据えたDX(デジタルトランスフォーメーション)や脱炭素化の推進を新機軸として打ち出した。
 コロナ禍に伴い人々の価値観や生活様式は確実に変化している。県は「誰一人取り残さない社会」に向けた予算の骨格を、国施策に呼応し「危機を克服して未来を拓[ひら]くデジタル田園都市の実現」と掲げた。独自色と実効性が厳しく問われることになる。DX推進は県有施設の環境整備や手続きのオンライン化にとどまらず、市町を含めた行政改革や県民サービスの向上につなげてこそ。国と市町をつなぐ県のあり方や公務員の働き方も変わってこよう。
 新機軸のDXは農林業、教育、経済、観光など幅広い分野で進める。DXに資する人材育成にも予算を盛った。
 熱海市伊豆山の土石流災害の情報収集に奏功した「3次元点群データ」は専用サイトをつくり、誰もが利用できる環境を整える。県は同データを用いて農業の生産性向上の方策を探り、茶園などでモデル事業を展開する。
 ただ、DXとともに重点化する脱炭素推進、生態系保全を含め、既存事業の延長線上で小粒な事業が目立つ。新機軸こそ豊かな発想が必須であるはずだが、独自色の乏しさは県事業の実情を露呈していると言えよう。
 予算総額が膨張したのは国財源によるコロナ対策費の増額が大きい。前年度当初比1・7倍の907億円を充てた。病床を用意する医療機関への補償や中小企業の資金繰り、困窮学生の支援など目下の課題に手当てした。
 新型コロナ感染対策は引き続き最重要課題として取り組まねばならない。新設の仮称・感染症管理センターは役割を明確にし、体制を整えたい。
 県民の命と健康、暮らしを守る施策は着実な実行が求められる。伊豆山の土石流災害を受け、盛り土監視強化に9400万円を計上した。7月の施行を目指す規制条例の実効性を担保する。土石流の原因究明と迅速な復旧・復興と併せ、同様の災害を繰り返さない対策は急務だ。
 歳入は企業収益の回復により県税収入が前年度当初比7・6%増の4810億円を見込んだ。県債発行を抑制し、県債残高も前年度を下回った。財政運営は一息ついた感があるが、高齢化に伴う社会保障費の増大など懸念材料はなくならない。財政健全化への努力を怠ってはならない。

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