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特集 : 福祉・介護

あの人に聞きたい/ターミナルケアホームを運営 岸森尚子さん(浜松市中区)【NEXT特捜隊】

 終末期を迎えた人を対象に「みとり」を専門にした施設「ターミナルケアホーム天寿」を浜松市中区で運営する岸森尚子さん(59)。掛川市に住む40代の看護師の女性から「利用者やその家族に穏やかに過ごしてもらうための工夫を知りたい」という依頼を受け、話を聞きに行った。

岸森尚子さん(浜松市中区)
岸森尚子さん(浜松市中区)

両親の介護がきっかけ


 両親の介護が「天寿」をつくるきっかけになりました。22年前、父が末期がんで入院しました。父はずっと「家に帰りたい」と言っていましたが、願いをかなえてあげることができませんでした。その後悔を原動力にヘルパー2級の資格をとり、介護の仕事に従事してきました。
 その後、母も介護が必要になり、介護施設に預けたのですが、ひとりぼっちで部屋にいる母に心が痛みました。ただ、寝たきりの人も日々考えを巡らせています。死期の迫った人一人一人に寄り添った介護がしたいと思い、一念発起しました。費用の面から古民家を改装することを選んだのですが、建物の所々に小さな傷が残っていて昔の名残が感じられます。高齢の方には「家みたい」「温かい」と言ってもらえます。


家族と気持ちを共有


 利用者さんはもちろん、家族の方も大事にすることを心掛けています。死期が迫ってくると、本人以上に家族が「死」に対して恐怖を感じ、受け入れがたくなるものです。面会に訪れたご家族の表情を見て、悩みや相談事がないか声を掛けるようにしています。そうしていると、ご家族の方からお話ししてくださるようになることも多いんです。寄り添うというより「(恐れを)共有する」という気持ちが近いです。
 ご家族には必ず「いつお別れが来ても悔いが残らないよう、手を握ったり背中をさすったりしながら、これまでの思いを伝えてほしい」とお話しします。日頃から感謝を伝えることで、見送る側にとっても悔いが残らないと思います。


「感謝を伝える場」に


 「『天寿』をつくって良かった」と毎日思います。開設から1年半、27人をおみとりしました。その中に、2人そろって入居されたご夫婦がいらっしゃいました。旦那さんは理髪店を営んでいたのですが、70代でがんを患い、奥様は認知症でした。旦那さんの願いが「奥さんと最期まで一緒にいたい」というもので、とても絆が強いご夫婦でした。
 旦那さんをいよいよみとる時、近所の人一人だけに連絡したところ、部屋が理髪店の常連さんでいっぱいに。旦那さんの人柄が伝わる出来事でした。それと同時に、天寿が「感謝を伝える場」になっていることが本当にうれしかったです。


<profile>きしもりなおこ 1962年、磐田市生まれ。介護福祉士の資格を持ち、介護職に就いて16年。看護師で娘の堀口南歩さん(28)と一緒に古民家を改装し、天寿を立ち上げた。現在は、6人の看護師と24時間体制で利用者のケアにあたる。南歩さんのほか、娘が2人いる。

★あなたの「聞きたい」を教えて  身近にいる変わった特技を持った人、ユニークな活動を展開している人、近所で知る人ぞ知る有名人…。多くの人に知ってほしい「あの人」をあなたに代わって訪ねます。情報と、聞いてみたい質問をお寄せください。

いい茶0

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