19歳で十両昇進、熱海富士 ふるさと歓喜、地元愛たっぷりオンライン会見

 大相撲春場所の番付編成会議で熱海市出身の熱海富士(19)=本名武井朔太郎、飛龍高出、伊勢ケ浜部屋=の新十両昇進が決まった26日、地元では歓喜の輪が広がった。伊豆山地区の大規模土石流からの復興を目指す同市。10代の若武者が放つ力強い光に、市民からは「励みになる」と感謝の声が相次いだ。

オンライン会見で喜びを口にする熱海富士
オンライン会見で喜びを口にする熱海富士

 熱海富士が小中学生時代に通った同市昭和町のトレーニングジム「SOLICパーソナルコンディショニングセンター」の指導者八代直也さん(50)は「市街地から標高800メートルの山の頂上まで駆け上がるトレーニングに泣きながら取り組んでいたが、決して諦めなかった」と振り返る。同市出身者で初の関取に「相撲界を引っ張る力士になってほしい」と期待を込めた。
 中学時代の文集に記した将来の夢は「関取になる」。熱海中3年時の担任だった安濃勇太さん(35)=静岡大付属静岡中教諭=は「まさに有言実行。その陰に人一倍の努力があったと思う」と語った。初場所で勝ち越しを決めた時に見せた表情は「中学時代と変わらない。気持ちの入ったいい表情だった」とたたえた。
 伊豆山地区からも喜びの声が。板金工で消防団員の一木航太郎さん(22)は「久々の明るいニュースに励まされる。地域のみんなも喜んでいる」と声を弾ませた。「しこ名で熱海の名を発信してくれている。本当にありがたい」と感謝した。
 斉藤栄市長は「明るい話題を届けていただき、大変うれしく思う」「今後も稽古に励んで、さらなる活躍を」とコメントした。


 ■「もっと稽古もっと強く」十両優勝狙う オンライン会見、地元愛たっぷり
 新十両昇進が決まった熱海富士が26日、オンライン会見を行った。初土俵から所要8場所のスピード出世を果たした19歳は「自分は熱海が大好き。(コロナ禍だが)帰って報告ができるなら、お世話になった方々に報告したい」などと地元愛をたっぷり示し、トレードマークの笑顔をのぞかせた。
 同日朝、部屋の親方や関取衆に「おめでとう」と声を掛けられて昇進を知った。「それまでは確定ではなかったので、『絶対に上がれる』と言われても不安だった。本当にほっとした」とにこり。兄弟子の羽織と着物を借りて会見に臨み、「着物は1枚あるけれど、羽織がなくて…。早く自分のものがほしい」と笑わせた。
 初場所は、2020年11月の初土俵以降初めて連敗を喫した。精神面の立て直しに苦心したが、地元から届く声援に支えられたという。「いろいろなメッセージをいただき、記事も見た。全部がうれしかった」「(土石流被害を受けて)地元が大変な時に、自分が頑張って勝って、良いニュースを届けられたらいいなという思いでやってきた」などと話した。
 20歳までに関取に、という最初の目標は達成した。今後について問われると「もっと稽古してもっと強くなって。この勢いで十両優勝を狙いたい」ときっぱり。「多くの方から応援される照ノ富士関のような相撲を取りたい。目の前の一番一番をやっていきたいが、(いずれは)やっぱり横綱になりたいです」。あどけなさの残る大器が口元を引き締めた。

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