土砂「なぜ伊豆山に」 遺族ら捜査進展期待 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流の原因究明に向け、静岡県警は26日、現旧土地所有者と取引があり、伊豆山への土砂の運搬・搬入などに関わったとみられる企業に捜査の手を伸ばした。昨年10月に現旧所有者の関係先を対象に実施した家宅捜索を皮切りに、本格化する捜査の状況に遺族や地元住民らの期待は高まる。「なぜ土砂が熱海に運びこまれたのか」―。関係者は今後の展開を注視している。

土石流で母親=当時(77)=を亡くし、盛り土部分を含む土地の現旧所有者を業務上過失致死容疑などで刑事告訴した瀬下雄史さん(54)=千葉県=は「県警が着実に捜査を展開してくれている。とても心強い」と語る。土砂運搬業者の責任も重いとした上で「最も責任が重いのは、本来の計画や目的と違う盛り土をし、放置し続けた現旧所有者。業者との関係性をしっかり暴き、不法行為の実態を明らかにしてほしい」と訴える。
一方、盛り土に関する行政手続きの検証を進める熱海市の斉藤栄市長は「現時点で特に申し上げることはない」と述べた。
複数の関係者によると、伊豆山に土砂や建設残土を搬入したダンプ運転手の多くは個人で営む「ひとり親方」で、神奈川県内のナンバーがほとんどだった。大半が過積載だったとされ、規定の3倍超を積む車もあった。
熱海市内の建設業関係者の一人は「なぜ他県から伊豆山に残土を持って来る必要があったのか。警察の捜査で全てが明らかになってほしい」と期待する。
熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)は3月に参考人招致、4月に証人尋問を予定する。現旧所有者のほか、盛り土の施工者、行政手続きに関わった職員ら聴取対象の絞り込みを進めている。これまでに県警の聴取などを受けた関係者も対象になる可能性がある。