「雇調金頼み」抜け出せず… 静岡県内企業申請、高止まり オミクロン株急拡大

 新型コロナウイルス禍で業績が悪化した企業の雇用維持に向けた国の支援策「雇用調整助成金(雇調金)」をめぐり、県内の申請件数の高止まりが続いている。有効求人倍率などの経済指標からみる雇用情勢は回復傾向にあるが、新変異株「オミクロン株」が急速に拡大する中、先行きは見通しにくい状況。事業者が「雇調金頼み」から抜け出せない事態となっている。

雇用調整助成金(新型コロナウイルス特例措置)の申請件数
雇用調整助成金(新型コロナウイルス特例措置)の申請件数


 ■業績先行き 不安
 「雇調金を活用し、月5日(追加で)休ませるシフトを組むことでなんとか雇用を継続できた」。千代田タクシー(静岡市葵区)では新型コロナ感染拡大初期の2020年4~5月、観光関連や深夜の利用客が激減。タクシー運行収入が前年の半分以下に落ち込み、雇調金の受給を始めた。
 客足がやや戻った現在は休業日を減らしているが、感染再拡大で夜間の利用客が再び落ち込みつつある。加藤高立社長は「買い物代行やホテルと連携した観光プランの提案など、新事業を打ち出したところだけに不安は尽きない。当面は雇調金の申請を止められない」と話す。
 静岡労働局雇用調整助成金センターによると、20年4月~21年12月における雇調金申請の受付件数は累計約16万件に上る。単月では約7千~8千件で推移し、高止まりが続く。
 申請書類の受け付けや審査などを行う同センターには、多様な事業主から毎日250~400件の申請が寄せられる。千葉功センター長は「切迫した状況にある事業者は少なくない。迅速な支給で、操業継続につなげたい」と語る。
 雇調金を頼みの綱に生き残りを模索する事業者は多い。県内商工会はコロナ禍に直面する中小・小規模事業者向けに経営相談窓口を設置。月千件以上に上る相談は雇調金や各種補助金に関する内容が過半を占めるという。足元でも雇用に関する相談は多く、県商工会連合会の吉田謙二事務局長は「雇調金がなくなると倒産する企業が増える可能性がある」と指摘する。

 <メモ>雇用調整助成金 失業防止を目的に、操業規模を縮小した事業者が従業員を一時的に休ませて雇用を維持した場合に支給する休業手当の一部を国が助成する制度。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は助成率や上限金額を引き上げる特例措置の延長を繰り返してきた。現在の上限額は原則1人1日1万1000円。財源不足が指摘される中、今年4月以降の特例措置の有無は決まっていない。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞