下田市の広域ごみ処理計画対応 詳細説明で市民の信頼を【湧水】

 下田市と南伊豆、松崎、西伊豆の各町が進める南伊豆広域ごみ処理計画は2021年9月、焼却施設の建設候補地を下田市清掃センターの敷地とする基本構想がまとまった。この構想に同市の一部市民でつくるグループが懸念を示し、市に公開質問状を提出している。市はごみ処理を巡る現状をデータとともに丁寧に説明してほしい。
 事業の再考を求める市民グループは21年11月までに3度、市に質問状を提出している。質問内容は主に①中学校や認定こども園がある候補地周辺の環境への懸念②ごみの再資源化への取り組み-を挙げる。
 現在の市清掃センターは1982年に完成した。周辺には84年に現在地に移転した下田中や、2014年に開園した下田認定こども園が所在する。市は質問への回答書などで、健康被害の報告はなく、現施設から出る排ガスなどの有害物質は環境基準をクリアしていると説明する。
 市は基本構想で、計画する新施設と類似した県内外の施設の自主基準値を示しているが、環境性能が向上した近年の類似施設の実測値も報告してほしい。現在よりも環境性能が向上すると分かれば、多くの市民の懸念は解消するだろう。
 市はごみの減量や再資源化については、エコバッグの作製や雑紙保管袋の配布などの施策を進めている。その上で、河津町や南伊豆町が役場で実施する古紙などの常時回収のように、市民が再資源化をしやすい環境づくりに取り組んでほしい。
 下田市は、一般廃棄物全体に占める事業系ごみの割合が46・9%(20年度)と半数近いのが特徴だ。人口が少なく、観光客が多い伊豆地域は、飲食店や宿泊施設を含む事業所から出るごみの割合が比較的高いが、下田市は広域化に参加する4市町の中でも最も高い。ごみ減量や再資源化には一般家庭だけでなく、企業の協力も欠かせない。
 下田市清掃センターは建設から40年を迎えて老朽化し、広域化による施設更新は喫緊の課題でもある。市民に協力を強いるごみ問題は、行政と市民の信頼関係が不可欠だ。不都合な点も含めて計画をつまびらかにすることが、信頼関係の構築につながるだろう。
 

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