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タブレット活用の悩み相談 対応力磨き機能発揮を【風紋】

 掛川市教委が導入した児童生徒向け悩み相談システム「こころの相談ノート」は、運用開始から1カ月が経過した。年末年始を挟み、寄せられた相談は150件以上。相談に踏み切る心理的なハードルをデジタル技術で引き下げた好例だ。機能を十分に発揮するために、個別の悩みに寄り添う対応力が試されている。
 システムは2021年12月10日に運用が始まった。1人1台配備のタブレット端末のホーム画面にアイコンを配置して、勉強と家庭、いじめ、身体、その他の5項目から相談内容を選択・入力していく仕組み。さまざまなケースを想定し、匿名入力や相談相手の指名を可能とした。
 外部委託に頼らず、ウェブ上のアンケート作成・管理ソフトを使って内製したのも特徴だ。民間では、エクセルなど一般的なソフトの利用だけで飛躍的に生産性が高まるとして、各地の支援機関が中小企業に「身の丈に合ったIT導入」を促している。ITの利活用が求められるのは行政の実務も同様。市教委が身近なツールに目を向けて、コストを抑えて変革に挑んだことを歓迎したい。
 一方で、気に掛けたいのが相談体制だ。児童生徒が送信した相談は市教委に届き、学校教育課が内容を把握した上で当該校に情報提供して対応に当たる流れ。告発が学校内部で隠蔽(いんぺい)されるリスクは減る半面、市教委の采配が課題解決の成否を大きく左右する構造になっているように思える。
 市教委によると、システム経由の相談はいじめ関連が目立ち、家庭環境が続くという。児童生徒が抱える悩みは複雑化していて、時には高度な専門知識が必要になるだろう。プライバシー保護の観点も重要だ。
 気軽に相談できる環境が整ったことで、相談はさらに多様化し、件数も増えることが予想される。重大事案に発展する可能性をはらんだSOSが埋没してしまう事態は避けなければならない。全国的に珍しい取り組みで前例が乏しいだけに、システムの使われ方に応じて体制強化を図る柔軟な姿勢を望む。
 

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