脱プラ時代に「紙ファイル」 紙のまち・富士で活用に広がり
脱プラスチックの機運が高まる中、製紙業が盛んな富士市でプラスチック製「クリアファイル」に代わる紙製ファイルの活用が徐々に広まっている。富士市役所が啓発品に採用し、市内の製紙メーカーも古紙回収の効率化などの実益を見込み普及に取り組む。

書類の保管や保護のための事務用品、文具として広く普及したクリアファイルに比べ、紙製ファイルはこれまで封筒メーカーなどによりほそぼそと生産されてきた。昨年、大手生命保険会社が「クリアファイルゼロ」を宣言し、にわかに注目が集まる。紙製は単価がプラスチック製よりも高く、防水性に劣る課題もあるが、余白への書き込みや印刷が可能な上、リサイクルが容易といった利点がある。
富士市シティプロモーション課は昨年末、地元メーカーに千枚を発注し、市内の名産品をデザインした紙製ファイルを導入した。同課の福島勇輝さんは「紙のまちにふさわしい地産地消の啓発品。持ちたくなり、自慢できる紙製ファイルは市の魅力発信になる」と喜ぶ。
トイレットペーパーなどを生産する「コアレックス信栄」(同市中之郷)は昨年9月に社内で使うクリアファイルを社名入り紙製ファイルに切り替えた。
同社は古紙を加工する際、機密文書などに混入したクリアファイルなどのプラスチック片を除去しているが、紙製ファイルは文書を入れたまま裁断や溶解が可能で利用者も分別の手間が省ける。佐野仁専務は「紙製ファイルが普及するとリサイクルが効率化できる。紙を扱う会社として姿勢を示した」と話す。
紙製ファイルに商機を見る企業もある。紙加工業「東伸紙工」(同市原田)は昨年から自社製造を開始した。割高ながら金融機関や行政機関など文書のやりとりが多い企業を中心に関心は高い。久保田基之社長は「現在は企業向け主体だが、文具として普及が進めば、単価も下がり、バリエーションも広がる」と期待する。同社はクリアファイルのように文書が透けるファイルや、市内の古紙を活用した100%富士市産の紙製ファイルの製品化も目指す。