トヨタ未来都市と連携 市民の実感、参画が鍵【迫る 裾野市長選㊦】
「良き対話をし、信頼できるパートナーシップを構築したい」。トヨタ自動車が裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」を担当するジェームス・カフナー取締役は昨年10月、市役所で市民対象に開かれた説明会で、地域と共存していく姿勢を強調した。

昨年2月に着工したウーブン・シティは現在、土地の造成工事が進む。早ければ2024年に一部オープンする見通しだ。未来都市の効果を市全域に広げようと、市は20年3月、デジタル技術を活用してまちづくりを進める「SDCC構想」を発表した。企業や団体の技術やサービスを生かしてスマートシティー化を図っている。
これまでに人工知能(AI)で衛星写真から耕作放棄地を判別する実証実験や、農薬散布用ドローンの導入、避難所の混雑状況をネット上に可視化するシステムなど、30件以上の取り組みが実現。ウーブン・シティの動きを好機と捉え、着実に行政サービスのデジタル化を進めている。
今後は生活に直結し、市民が効果を実感できるサービスを提供できるかが課題になる。会社員男性(26)は「新しい技術を生かし、もっと住みやすいまちにしてほしい」と期待する。一方、パート従業員女性(46)は「市はきらきらした理想を語るが、市民生活の実態とはかけ離れている」と冷ややかだ。
ウーブン・シティの最寄り駅となるJR岩波駅周辺では、関係・交流人口の拡大を見据え、にぎわい創出に向けた整備事業を市民の意見を踏まえながら検討している。昨年6~12月に事業の基本計画策定に向けたワークショップを開催。地域住民や企業関係者ら約40人が道の駅の開設や自然公園整備などの提案を寄せた。
昨年11月に岩波地区で開かれた軽トラマーケットには、トヨタ子会社も参加した。燃料電池車による電力供給でイベント運営を支え、実証都市の主なエネルギーとなる水素の活用をアピールした。市内の若手経営者らでつくる一般社団法人「南富士山シティ」の鈴木大悟代表理事は、こうした市民レベルでの融和の必要性を指摘する。「説明会以降、トヨタは地域とのコミュニケーションを図ってくれている。トヨタ頼みではなく、仲間として一緒に地域を盛り上げていくべきだ」