「ネット利用 子が自らルール決めを」 土屋会生・聖明病院作業療法士インタビュー
静岡県の依存症治療拠点機関として啓発活動に関わり、ネット利用を見直したい児童生徒を対象にした「つながりキャンプ」に初回から参加している聖明病院(富士市)作業療法士の土屋会生さんにポイントを聞いた。

―ネット依存とは。
「インターネット利用により社会生活に支障を来している状態。子どもであれば学校に行かない、食事を取らないなどの状況が該当するだろう。対策は、端末を『使う』前提でどうするか考えることがポイントで、酒や薬物のように『断つ』わけではない。教育現場の導入などで触れる機会が増えていて、どうしたら適正に付き合えるのか、さらなる議論や取り組みが必要だ。聖明病院が受ける相談件数はこの数年で増加している」
―つながりキャンプでの活動をどう評価するか。
「座学で指導を受けるスタイルではなく、小中学生は大学生サポーターを交えて話し合ったり、意見発表したりしながら、より柔軟な考え方を身に付けられるよう認知行動療法を取り入れている。議論テーマは『ゲームをやりすぎそうな時にどう乗り切るか』など、多様な答えが挙がる問いを心掛けている。子ども自身が『楽しいけれど、やり過ぎていないかな』など葛藤を言語化することで、視野を広げる機会を目指している」
―各家庭で意識すべきことは。
「自己コントロール力を徐々に養うよう工夫すると良い。新たに端末を持たせる家庭では、まずは家族が集まるリビングにデスクトップを置くなど、パーソナルスペースに持ち込みにくい大きい端末から導入し、使い方を一緒に考えていくことがお勧めだ。導入後ではなく、導入前に子どもと利用時間について合意し、親も守る姿勢を見せてほしい」
―使い過ぎが気になる子どもは。
「子ども自身ができそうな削減目標を立てること。保護者が意見を押し付けるのではなく、本人と話し合って双方が合意した目標を立てるのが望ましい。達成した際にはたくさん褒めてあげてほしい。できなかったら理由を一緒に考えてほしい。親からの抑圧的な指示は子どもには伝わらない。現実の世界をつらく感じてしまうため、逆効果だろう」