あんまんの中身 こしあん、粒あんの境界線はどこ? セブン‐イレブンは「静岡/愛知」 ほかのコンビニは…
コンビニ「セブン‐イレブン」で販売しているあんまんは、東日本地域はこしあん、西日本地域は粒あんと分かれていて、太平洋側の境目は静岡と愛知の県境にある。2021年11月、セブン‐イレブン公式ツイッターがこのような内容のツイートをして話題を呼んだ。静岡と愛知の県境を挟み、700メートルしか離れていない2店舗で本当にあんまんの中身は違うのか、実際に調べた人がいる。

静岡-愛知県境の2店舗を調べたら…
調査したのは、県境の愛知県豊橋市在住、静岡県湖西市在勤の女性。非公式キャラクター「湖西ほとり」を名乗り、SNSを通じて湖西の話題や飲食店を紹介している。常に湖西の魅力をアピールする「ネタ」を探している湖西ほとりさん。セブン‐イレブン公式ツイッターのツイートを見て、県境の店舗を調べると、JR新所原駅前の静岡県側に湖西新所原店、愛知県側に豊橋中原店があった。2店の距離はわずか700メートル、歩いたら10分程度で行くことができる位置関係だ。



「本当にあんまんの中身が違えば、日本一簡単に食べ比べができる地域とアピールできる」と考えた湖西ほとりさん。実際に購入し、湖西新所原店はこしあん、豊橋中原店は粒あんと分かれていることを確かめた。湖西、豊橋両市のほかのセブン‐イレブンも何店舗か回り、公表通り県境で分かれていたことを確認した。


ツイッターで発信すると1400件以上リツイートされた。コロナ禍、県境地域はこれまで、「〇〇県に来ないで」の看板が掲げられたり、「他県ナンバー狩り」が注目されたりするなど、ネガティブな話題で取り上げられることが多かった。湖西ほとりさんは「県が違うから分断があるという考えではなく、県が違うからこそ両方楽しめる、とポジティブな話題を提供できた」と喜んだ。
あんこの地域性 サービスエリアの菓子で判断
そもそも、セブン‐イレブンはなぜあんまんの中身を地域によって分けているのか。セブン&アイ・ホールディングス広報センターに問い合わせると、「あんまんの製造メーカー中村屋(東京都)に確認した上で、地域によるあんこの嗜好性を踏まえて判断している」との回答があった。東西の境目は、太平洋側から日本海側に向かって静岡と愛知、長野と岐阜、富山と石川のそれぞれの県境で、各店舗のオーナーには、この区分けに沿った商品を扱うよう推奨しているという。
中村屋に、地域の嗜好性の判断基準を聞いた。商品広報課の担当者によると、県境にある高速道路のサービスエリアで販売しているあんこ菓子が粒あんかこしあんかを調べ、境目を定めたという。ただ、調べたのは10年ほど前で、当時の担当者がいないこともあり、静岡と愛知のサービスエリアでどんな違いがあったのかなど詳細は分からなかった。
ローソンは粒あん優勢 東日本で「粒・こし」きっ抗
ほかの大手コンビニのあんまんの取り扱いはどうなっているのだろうか。

ローソンは粒あん、こしあんの両方を全国の店舗で取り扱うことができるようにしている。最終的に、どの商品を置くかは店のオーナーの裁量で決まるが、広報部によると、西日本地域では粒あん採用店が圧倒的に多く、東日本地域では粒あんとこしあんの採用店がきっ抗しているという。こしあんは、北海道では現地の要望を受けて一般的なこしあんを扱い、北海道以外ではごまあんを販売している。
ローソンの区分けでは、静岡県は粒あん地域。こしあんを販売している店舗もあるが、県内全体で粒あんの売り上げはこしあんの7倍ほどあるという。
富山県も粒あん地域で、「粒・こし」の境目がセブン‐イレブンよりやや東にあるイメージだ。
ファミリーマートも東西で地域差
ファミリーマートも、粒あんのみを取り扱う沖縄県の店舗を除き、ほかの全国の店舗では粒あん、こしあんの両方を扱えるようにしている。東日本地域(関東、東北、北海道エリア)ではごま風味のこしあんを、西日本地域(北陸、関西、東海、中国、四国、九州エリア)では粒あんを取り揃えている店舗が多いという。ファミリーマートの区分けでは、静岡県はちょうど東西に分かれる地域で、富士市から東側(関東エリア)はこしあん、静岡市から西側(東海エリア)は粒あんを選ぶ店舗が多いという。
コンビニ大手3社のあんまんの販売傾向として、東日本ではこしあん、西日本では粒あんという地域区分がみられた。静岡県はまさに東西の境目で、各社によって「粒」か「こし」か、対応が分かれていた。
あんこ嗜好性の東西区分「一概には言えず」
あんこを通じた地域振興に取り組む「日本あんこ協会」(東京)顧問で、帝京平成大学健康栄養学科助教の芝崎本実さんは「東西であんこの嗜好性が異なるとは一概に言えないのでは」と話す。

芝崎さんによると、地位の高い人へ献上する和菓子の発展によってこしあんと粒あんの区別が明確になったのは、諸説あるが江戸時代から。京都、東京の城下町など和菓子文化が発展した地域では、比較的こしあんが好まれる傾向があり、大福などもち菓子文化が発展した農村地域では、皮ごと炊いて無駄が出ない粒あんがよく食されてきた。こうした歴史を背景にした地域の嗜好性は現代も残っている可能性があるが、東西日本のような大きなくくりで区別するのは難しいという。
芝崎さんは「品種改良で小さな小豆が誕生し、粒あんも口当たりが良くなるなど、あんこの種類やファンの裾野は広がっている。どのようなあんこを好むか個人の嗜好性によるところが大きくなっている。粒あん、こしあん両方のあんまんを用意してあるほうがお客さんの選択肢が広がっていいのでは」と話す。