大自在(1月11日)大人になる

 文章を書いていて迷うことがある。例えば、「大学に行く」と「大学へ行く」。書籍などによると、「に」は到達点を強調する時に使い、「へ」はそこに至る経路にも注目しているという。
 今週末には大学入学共通テストがある。受験生諸君は「大学に」と勉強してきたか、「大学へ」か。「あの大学がいい」と「あの大学でいい」とでは、結果も違ってくるだろう。
 主に名詞の後に付き、その語と文中のほかの語との関係を表す助詞を格助詞という。静岡大名誉教授の原沢伊都夫さんは著書「日本人のための日本語文法入門」で格助詞を「日本語のパーツをつなげる魔法の粉」と説く。母語が日本語でうれしくなる。
 では、「~になる」「~となる」は。「芋虫はサナギになり、チョウとなる」と教わったことを思い出す。古いアニメの「おまえは虎になるのだ」(プロレス)、「巨人の星となれ」(野球)も浮かぶ。
 「に」には未完、「と」には完了の意味合いがあるようだ。「成人の日」は、大人“に”なったことを自覚した青年を祝い励ますと祝日法にある。20歳は節目だが通過点にすぎない。新成人の今後の成長と活躍に期待すれば、やはり「に」がふさわしい。
 すんなりなったなら「に」、特筆すべき経緯や曲折があれば「と」という解説も。自分一人で大人になったわけではなく、見守られ、支えられて大人となったと考えてみるのもいい。掛川市で行われた王将戦7番勝負第1局は、7月に20歳になる藤井聡太四冠が熱戦を制した。史上最年少五冠となるのだろうか。いや、「五冠に」か。

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