湧水県外流出「期間拡大も」「長野側多くなる」 反映されない意見、他にも 国交省中間報告【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、国土交通省専門家会議が昨年12月に取りまとめた中間報告が会議内容を十分に反映していなかったとみられる問題は、静岡新聞社が同30日付朝刊で報じた他にも、複数箇所で議論を反映したとは言えない記述があった。南アルプストンネル工事に伴う湧水の県外流出期間がJR東海の想定より延びる可能性に触れた議論など、流域の利水者の関心が高い論点も含まれている。

中間報告に会議内での委員の意見が反映されなかったとみられる主な内容
中間報告に会議内での委員の意見が反映されなかったとみられる主な内容
国土交通省専門家会議の「実名化議事録」はこちらのQRコードから
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中間報告に会議内での委員の意見が反映されなかったとみられる主な内容
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 静岡新聞社が作成した「実名化議事録」との照合で、5日までに判明した。
 トンネル工事中の山梨、長野への湧水流出に関する部分については、第12回会議(昨年9月)で沖大幹委員(東京大教授)が「(JR東海が)10カ月間と言っている県外流出期間が、倍に延びる可能性もゼロではないかもしれない。既に把握され分かっているリスクと、今は誰も全然気付いていないリスクがある」と発言した。中間報告の文言を巡っての議論だったが、実際の中間報告では「先進坑貫通までの約10カ月間」と表現された。
 長野県境付近の地質に関し議論した第10回会議(同3月)では、大東憲二委員(大同大教授)が「明確に地層がずれており、仮に断層が破砕されていた場合、地表面辺りまで影響が及ぶとすれば、多くの出水となる可能性がある」と指摘した。中間報告はこの意見に触れず、脚注に「トンネル湧水量が大きいことが想定される山梨県側を中心に評価を行った」と表記するにとどめた。
 中間報告の取りまとめそのものに関し、第12回会合で森下祐一委員(静岡大客員教授)が、中間報告の記述が議事録のどの部分に該当するかを記すよう求めたが、中間報告は明示しなかった。
 国交省鉄道局の東海太郎環境対策企画調整官は「中間報告に記載できる文の量は限られる。今後、県側との意思疎通を通して分かりやすく説明する」とコメントしている。
 
 ■記者の目 中間報告の妄信、危うい
 国土交通省専門家会議の中間報告には大きな重みがあると考えていたが、その思いは裏切られつつある。全13回の傍聴取材を加味し、議事内容を細かく記録してきた。中間報告後、改めて議事を読み込むと、大井川流域にとって重要な委員の見解が中間報告に必ずしも反映されていないことが分かった。
 議論を後から検証するための役割を担うのが議事録だ。委員以外の専門家への取材を踏まえると議論が不十分な点はあったが、会議内の各委員の意見は県やJR東海に偏らず、科学的で論理的な発言が多かったと判断している。
 その意見が十分反映されていないのなら、中間報告だけを妄信するのは危うい。県専門部会長と国交省会議の委員を兼ねる森下祐一静岡大客員教授の指摘の通り、JRや同省は中間報告より議事録を重視すべきと考える。
 
 <メモ>実名化議事録 国土交通省は専門家会議の会合ごとに委員名を伏せた議事録を公表している。静岡新聞社は傍聴取材を踏まえて委員名を議事録に記載。議事録の発言部分が実際の発言の趣旨に沿っているかチェックした上で、デジタルニュース媒体「あなたの静岡新聞」に掲載している。

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