「助けて」と言っていい 社会は変わる 生活困窮者支援に取り組む【幸せまでの距離④】

 「自分は『助けて』と言えなかった。だから気軽に言える社会にしたいんです」。生活困窮者の支援に取り組むNPO法人POPOLO(ポポロ)事務局長の鈴木和樹さん(40)=静岡市葵区=は今日も仲間とともに県内を駆け回る。

生活困窮者(左)の相談に乗る鈴木和樹さん。「助けて」と気軽に言える社会を求めて奔走する=2021年12月上旬、富士市
生活困窮者(左)の相談に乗る鈴木和樹さん。「助けて」と気軽に言える社会を求めて奔走する=2021年12月上旬、富士市

 コロナ禍のしわ寄せは社会的弱者に重くのし掛かり、シングルマザーなど子育て世帯からの食料支援の申し込みが大きく増えた。元々不安定だった非正規社員は、失業するなど大きな影響を受けている。
 一方、「助けてと言っていいんだよ」というメッセージが少しずつ届いている表れだとも感じる。支援の幅を困窮する学生にも広げ、大学や外国人学校、定時制高校でも食料配布に乗り出した。
 活動の原点にあるのは幼少期からの辛い体験。両親が離婚し、小学4年生頃から体が不自由になった祖母と2人で暮らした。祖母は家を売ってお金を工面したが、生活保護を受けることに。修学旅行前には保険証を提出できず、「すごくみじめで嫌だった」。生活保護はいじめも招いた。
 中学教師になる夢も諦めた。「もしお金があって大学へ行っていたら」。その先の未来を想像しては落ち込んだ。当時、奨学金など助言をくれる大人は周りにいなかった。
 NPOを設立したのは「生活保護ありきでなく、選択肢を増やしたかったから」。県内で漫画喫茶の店長をしていた時、客が言った。「公園の水は体を洗うのに冷たくてね」。夜になると、両手に生活道具一式が入った紙袋を抱えた人たちが、時間割引を求めて店の前に行列を作った。衝撃だった。「何とかしたい」。自身の生い立ちと重なり、思いが込み上げた。
 NPOが提供する一時的な住居に入って住所が定まり、年金や雇用保険を受け取れるようになった人がいる。仕事を見つけて資金をため、巣立っていく人も。自立に向けたさまざまな支援を行うが、「まず自分で決めてやってみること」を意識する。手取り足取りの支援は自尊心を傷つけかねない。
 食料支援はさまざまな団体と協働する。駆け込み寺のような場所を各地域につくりたくて、食料は相談機関や福祉施設などを通じて届けている。なかなか言い出せないSOSは待っていても受け取れない。食料支援をきっかけに、本当に困っている人に寄り添いたい。
 POPOLOはイタリア語で「みんな」を意味する。「いろんな人と手を取り、助け合うことで社会は変わる」。鈴木さんは共助の力を信じている。
 (社会部・佐野由香利、写真部・小糸恵介)

 <メモ>POPOLOなど10以上の団体で構成するNPO法人ふじのくにフードバンクが行う食料支援では、一般家庭の余剰食料を募集するフードドライブ事業も展開する。食料回収ボックスは市町庁舎や社会福祉協議会、スーパーなど全国最多の317拠点に設置する。鈴木さんは「多くの人の目に触れてもらい、活動を知るきっかけにしてほしい」と期待する。道の駅やネットカフェなどに相談を呼び掛けるポスターを掲示し、LINEなども活用して生活困窮者とつながろうと取り組む。鈴木さんは「周りの困っている人に相談先や支援の存在を伝えることで、支援の輪が広がる」と呼び掛ける。

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