30数社ダンプカーが土砂運搬 造成会社代表、許容量超え認識か 熱海土石流・起点盛り土

 熱海市伊豆山の大規模土石流で、起点となった盛り土の造成計画が市に受理された2007年以降、少なくとも業者三十数社のダンプカーが土砂の運搬・搬入などに携わり、現場に出入りしていたとみられることが、2日までの関係者への取材で分かった。県警は盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社の代表(71)が、ダンプで運び込まれた土砂の総量について市に申請した許容量を大幅に超えると認識していたとみて、事業者らから当時の状況を聴取するなどして実態解明を急いでいる。

盛り土が崩落した土石流の起点付近。早朝や悪天候時を中心に多数のダンプカーが出入りし、土砂が搬入されていたとされる=21年9月末、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
盛り土が崩落した土石流の起点付近。早朝や悪天候時を中心に多数のダンプカーが出入りし、土砂が搬入されていたとされる=21年9月末、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 複数の関係者によると、現場に出入りしていたダンプの事業者は大半が個人で営む「ひとり親方」で、「湘南」や「相模」など神奈川県のナンバーがほとんどだった。過積載が多く、規定の3倍超を積む車両もいたとされる。早朝や悪天候時の運搬を目撃した住民は多く、濃霧の日は行き来する台数が急増したとの証言がある。同県湯河原町へつながる道路にダンプが連なることもあったという。
 不動産管理会社などが10年ごろまでに造成した総盛り土量は7万から7万5千立方メートルと推定され、市に届け出た盛り土量の約2倍に相当する。昨年7月の大規模土石流で崩落した土砂の量は5万5千立方メートルと見込まれる。
 県警は昨年10月、業務上過失致死などの疑いで、盛り土を含む土地を11年まで所有していた不動産管理会社代表と、現所有者の関係先を家宅捜索した。昨年12月には遺族5人から出ていた不動産管理会社代表と現所有者に対する殺人容疑の告訴状を受理した。今後、ダンプ事業者らの聴取などを基に幅広い視野で捜査を進め、立件の可否などを検討する。
 

長年、神奈川から静岡県へ

 

 建設業関係者によると、神奈川県は土砂の運搬・搬入の規制が静岡県より厳しいというのが業界の共通認識とされる。このため、神奈川県の建設残土などを本県内に運び入れる行為は長年にわたって行われてきたという。
 過積載も横行しているとみられる。熱海市の元職員によると、担当者だった当時、盛り土の現場でダンプの運転手を問い詰めたところ、運転手は違法性の認識を示した上で「市には監督権限がないはずだ」などと開き直り、「エンジンを改造しているから伊豆山の坂道も苦にならない」と話したという。
 別の元市職員や造成に携わった関係者によると神奈川県小田原市の不動産管理会社代表は土砂が捨てられたままの盛り土現場に頻繁に姿を現し、重機を慣れた手つきで操っていた。周辺には「道は、ブルドーザーで進んでいけばどこにだってできる」などと語り伊豆山以外の現場でも造成作業を経験していることを示唆したとされる。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞