国交省の中間報告 会議内の議論複数反映せず 静岡新聞社作成議事録で判明 解釈の違いで混乱の恐れ【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、国土交通省専門家会議が19日にまとめた中間報告に、会議での実際の議論を反映していない記述が複数あることが29日までに、静岡新聞社が作成した「実名化議事録」との照合で分かった。委員間で解釈の違いが残り、今後、混乱が生じる可能性もある。

国土交通省専門家会議の大井川水資源問題に関する中間報告。会議内の議論を反映しない内容も含まれている
国土交通省専門家会議の大井川水資源問題に関する中間報告。会議内の議論を反映しない内容も含まれている
国土交通省専門家会議の中間報告と会議内での議論
国土交通省専門家会議の中間報告と会議内での議論
国土交通省専門家会議の大井川水資源問題に関する中間報告。会議内の議論を反映しない内容も含まれている
国土交通省専門家会議の中間報告と会議内での議論

 トンネル掘削で生じる発生土(残土)に関し、中間報告は「適切な処理・管理が継続されれば、表流水や地下水の水量・水質等には影響をもたらすものではないと考える」と記載した。
 会議では複数の委員が、基準を上回る重金属を含んだ残土が出た場合、その残土を上流域の川沿いに置くことについて問題提起した。「影響をもたらすものではない」という文言に着地した形跡はない。
 また、中間報告が「中下流域の地下水量への影響は河川流量の季節や年ごとの変動(井川ダム地点で年間9億~15億トン)の影響に比べて極めて小さい」とした箇所も、会議では委員間で「『最大でも河川流量(表流水量)の1割程度と推計されている』という言い方でどうか」「それでいい。小さい、大きいは主観の問題がかなりある。客観的な事実を書く方が適切だ」とのやりとりがあったが反映されなかった。
 中間報告は「極めて小さい」の解釈を明確に示していない。沖大幹委員(東京大教授)は会議内で、上流域から下流域にわたって地下を流れ続ける地下水量の推定に基づき「年0~1億トン」に相当するという見解を示した。しかし、会議後の記者会見で同省鉄道局の江口秀二技術審議官は表流水量の変動量から「年プラスマイナス3億トン」との解釈を説明。別の同省担当者は「地下水位の低下範囲が椹島(導水路トンネル出口)以南で小さくなる傾向を指す」とした。
 中間報告の記載について同省鉄道局の東海太郎環境対策企画調整官は「案は事務局が作成した」とした上で「時間が限られているので会議の場で全て議論できるわけではない。委員によって(中間報告の)見方は違う。中間報告で全てが解決するわけでもない」と説明した。
 同省は28日、県に対し、県有識者会議の専門部会として中間報告に関する質問を同省に提出するよう求めた。県側と意見交換や情報共有を図るという。専門部会長と国交省専門家会議の委員を兼ねる森下祐一静岡大客員教授は取材に対し、中間報告よりも議事録の方が重要だとの考えを示した。

 <メモ>実名化議事録 国土交通省は専門家会議の会合ごとに委員名を伏せた議事録を公表している。静岡新聞社は傍聴取材を踏まえて委員名を議事録に記載。議事録の発言部分が実際の発言の趣旨に沿っているかチェックした上で、デジタルニュース媒体「あなたの静岡新聞」に掲載している。

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