流域住民の感情理解を リニア大井川水問題【とうきょうウオッチ/記者余論】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題に関する国土交通省の専門家会議の中間報告がまとまった。科学的、工学的な観点から「トンネル湧水全量を戻せば中下流域の流量は維持され、地下水量への影響は極めて小さい」とした一方、前提となるJR東海の予測は「不確実性」が伴うと指摘した。

中間報告をまとめた国土交通省専門家会議後に行われた記者会見。JR東海には流域への丁寧な対応が求められる=19日、国交省
中間報告をまとめた国土交通省専門家会議後に行われた記者会見。JR東海には流域への丁寧な対応が求められる=19日、国交省

 トンネル掘削の影響を予測するための解析に頼らざるを得ない以上、「不確実性」はある程度仕方がない。JRは専門家会議の指摘で調査やデータを追加したが、限界がある。福岡捷二座長(中央大教授)は「今の段階でやり得ることはやったのではないか」との認識を示した。
 ただ、不確実性が伴うと指摘されれば、不安になるのが流域住民の心情だ。中間報告をまとめた会合で、委員の一人は「自分たちの水が脅かされるとなると理屈ではなく、胸がざわざわする。水の問題は感情に結び付きやすい」とJRにくぎを刺した。
 科学的、工学的なお墨付きがあるからと、住民は納得できるわけではない。専門性がなければ、なおさらだろう。JRは住民感情をよく理解し、寄り添うことが大切だ。
 福岡座長は専門家会議の議論が始まった当初、JRの説明の拙さに「思うところがあった」という。専門家でさえ、納得いく結論をJRから引き出すまでに、1年8カ月もかかった。「感情」を伴う住民の理解を得るのは、より時間がかかることも覚悟する必要がある。
 JRにはその現実を受け止め、丁寧な対応を尽くしてほしい。

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