焼津漁港のカツオ盗事件 ブランド失墜、再構築を【追跡2021⑥完)】

 焼津漁港(焼津市)を舞台にした冷凍カツオの窃盗事件。市場を取り仕切る焼津漁業協同組合の職員、カツオを食卓に届ける水産加工会社の元幹部らが逮捕される事態に、水産都市のブランドは大きく傷ついた。

一連の問題について謝罪する焼津漁港の西川角次郎組合長(右から2人目)=11月29日、焼津市内
一連の問題について謝罪する焼津漁港の西川角次郎組合長(右から2人目)=11月29日、焼津市内

 捜査が本格化した10月。揺れる漁港の様子を目にした水産関係の元従業員は「少なくとも20年前に現場を目撃した。ようやく明るみになった」と冷静に受け止めた。
 焼津漁協がまとめた内部調査の報告書では、最も古いカツオの抜き取り行為は数十年前からとされた。職員の遊興費や飲み会費用を工面するため、魚を現金化していた。漁港内にあしき慣行がはびこった結果、大がかりな窃盗事件に発展した。
 今回の報告書では、2012年に抜き取り行為に関する告発が焼津漁協にあったことが明らかになった。未計量のカツオを倉庫に搬送するといった手口で、立件された事件と酷似している。
 ただ、名指しされた職員が関与を否定したことで、追及は終わった。ある関係者は「あの時にきちんと調べていれば、ここまで深刻化しなかった」と悔やむ。
 6日開催の焼津漁協による船会社を対象にした説明会。「今の組織のままで大丈夫なのか」。出席者の怒りに満ちた声は閉ざされた扉の外にまで響き渡った。被害に遭った船会社の関係者は「命がけで捕った魚を何だと思っているのか」と憤る。
 焼津漁協は再発防止策の検討委員会を立ち上げて、市場の改善に向けて動く。ただ、これまでの立件分とは別の窃盗容疑が浮上し、事件の捜査は来年も続きそうだ。水産関係者は「うみを出し切るべき」と口をそろえる。失墜したブランドの再構築を図るためにも、全容解明が待たれる。

 <メモ>焼津漁港を舞台にした窃盗事件を巡っては、静岡地検が焼津漁協職員や水産加工会社元社長ら5人を起訴した。窃盗被害に遭ったとして県外の船会社3社が焼津署に告訴している。さらに、立件分と別の窃盗の疑いが浮上し、同署は運送会社など関係先の家宅捜索を実施した。

 

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