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認知症患者の「心の声」 絵本で表現 介護指導者らが制作

 静岡県内外の認知症介護指導者6人が、認知症になった人の心情を代弁する絵本「いっしょにあるく」(B5判、16ページ)を制作した。クラウドファンディング(CF)で出版費用を募った。国によると、2025年には高齢者の5人に1人が認知症となる見通し。誰もがかかったり、見守ったりする可能性を見据え、本人の意思に寄り添う大切さを訴える。

試作した本を見せる川崎誠之さん=12月中旬、静岡市葵区
試作した本を見せる川崎誠之さん=12月中旬、静岡市葵区

 認知症になった高齢女性の「わたし」が登場し、記憶や行動力を表したパズルを失うことに戸惑いながらも「自分らしく生きたい」と願う様子を温かな画風で表した。「認知症は何もできない人」という偏見でなく、見守る人が正当化しがちな過剰な安全管理も本人には「つらいこと」と描いた。「一緒に迷ったり、悩んだりして歩いてほしい」と呼び掛けている。
 制作チームは静岡市葵区の川崎誠之さん、三島市の後藤剛久さんのほか、絵を担当した兵庫県の上埜美恵子さんら全国から集った。「高齢者の表情は関わり方で変わる」という介護現場での体感を発信しようとCFにも挑戦。当初目標の120万円に到達後、増刷して学校へ寄付するために190万円に変更したところ、約210万円の善意が寄せられた。「自分たちと思いを共有できた人がこれほど多かったことに感動している」と川崎さんは喜ぶ。
 チームは①2千部発行②47都道府県の図書館に置く③認知症患者の心を伝える研修ツールにする―と目標を掲げる。絵本を分析して研修用の資料作成に取り組む後藤さんは「絵本は分かりやすくできている。感情移入してもらいながら、専門的理解を深めていってほしい」と意気込む。

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