熱海土石流 「盛り土」責任追及続く【追跡しずおか2021①】

 2021年が間もなく幕を閉じる。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、東京五輪・パラリンピックは静岡県での自転車競技も含めて1年の延期を経て開催され、静岡県勢が躍動した。7月に熱海市伊豆山で多くの命を奪った大規模土石流は、人災の側面が指摘されている。注目を集めたそれぞれの現場のその後を追った。

盛り土を含む土地の現旧所有者に対する殺人容疑の告訴が受理され、報道陣の取材に応じる遺族ら=12月6日、熱海市
盛り土を含む土地の現旧所有者に対する殺人容疑の告訴が受理され、報道陣の取材に応じる遺族ら=12月6日、熱海市

 
 「盛り土を造成した業者が一番悪い。だが、危険を知りながら住民に伝えなかった人たちの責任も重い」。熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から5カ月半が過ぎた18日、遺族らでつくる「被害者の会」の会合で、娘を亡くした小磯洋子さん(71)は語気を強めた。誰ひとり謝らないまま時が流れていく現状に、他の被災者も怒りをあらわにした。
 土石流は不適切に造成された盛り土による人災との見方が強い。県警は10月、遺族の瀬下雄史さん(53)=千葉県=の告訴を受け、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社の代表(71)と現在の土地所有者(85)を業務上過失致死容疑などで強制捜査した。11月には小磯さんら5人の遺族が「単なる過失では済まされない」として両者を殺人容疑で告訴し、12月に受理された。約70人が名を連ねる被害者の会は、両者などに約32億円の損害賠償を求める民事訴訟も起こした。
 遺族らが法的措置を講じる中、県や熱海市は盛り土に関する行政手続きが適正だったかどうか検証している。これまでに開示された公文書では、県と市が危険を認識していたことや、法令違反を繰り返す不動産管理会社に対して措置命令の発出を見送ったことなどが明らかになっている。「そもそも水源の近くで盛り土を認めた判断が間違いだ」。母親を亡くした鈴木仁史さん(56)はそう悔しさをにじませる。
 熱海市議会は土石流の責任追及のため、強い調査権限を持つ特別委員会(百条委員会)を設置した。退職者を含む県と市の職員をはじめ、土地所有者らの証人尋問を予定する。ただ、対象者の絞り込みに時間を要するとされ、本格的な検証が始まるのは早くても1月下旬以降の見通しだ。「復興も大事だが、原因と責任が明らかにされなければ前に進めない」。自宅が全壊した太田滋さん(65)はそう強調した。

 <メモ>土石流は7月3日午前10時半ごろに発生し、26人が死亡。いまだ太田和子さんの行方が分かっていない。流出した土砂約5万5千立方メートルのほとんどが起点で崩落した盛り土とみられる。住宅被害は98棟に上り、53棟が全壊した。

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