「水量維持」JRの予測は不確実 国交省会議、中間報告で対策要請【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題を議論してきた国土交通省の専門家会議(座長・福岡捷二中央大教授)は19日、第13回会合を都内で開き、中下流域の水利用に関する中間報告をまとめた。水量が現状維持されるというJR東海の予測は不確実性を伴うとして同社に対策を要請。表流水の量は「トンネル湧水の全量戻し」をすれば維持され、地下水量への影響も「極めて小さい」としたが、全量戻しの具体的方法は示さず、JRと県、流域市町の協議に問題解決を委ねた。

国土交通省専門家会議の中間報告のポイント
国土交通省専門家会議の中間報告のポイント
南アルプストンネルの縦断図
南アルプストンネルの縦断図
国土交通省専門家会議の中間報告のポイント
南アルプストンネルの縦断図

 トンネル県内区間は県境付近を山梨、長野側から掘削する計画のため、貫通までトンネル湧水が県外流出する。JRは自社の予測結果で県外流出時も別区間のトンネル湧水で減水分を補えるとし、中下流域の水量は減らないと主張していた。
 中間報告は、JRの予測するトンネル湧水量が「確定的ではない」とし、地質や気候などリスクとなる要因を整理した上で、リスク対策の実施や、流量、地下水位などの継続的な計測結果の地域との共有を求めた。全量戻しを含む具体的な方法は県などと調整するよう要請した。
 表流水が維持された場合の中下流域の地下水が減る量は、不確実性があるとしながらも年0~1億トンに相当するとしたが、表流水量の年間変動量9億~15億トンに対して「極めて小さい」と表現した。
 福岡座長は会議で「地元の不安が払拭(ふっしょく)されるよう真摯(しんし)に継続的に対応してほしい」とJRに求めた。オブザーバー参加した難波喬司副知事は「JRの対応が改善されて前に進める段階になった」と一定の評価をした上で「湧水県外流出や残土置き場などの問題は解決策が示されていない」とし、1月中に流域10市町や利水団体に国交省会議の内容を説明する方針を示した。
 専門家会議は県側とJRの協議が行き詰まったため、JRへの指導を目的に昨年4月に設置され、協議は1年8カ月間に及んだ。

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