リニア工事の湧水流出問題、JRの説明変遷 試算の根拠不明確

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題で焦点の一つになっているトンネル湧水の静岡県外流出について、JR東海の流出量などに関する説明が変遷を繰り返している。湧水の流出量は中下流域の流量が維持できるかどうかに関わるが、地質の詳細な調査をしないまま試算した数値の根拠は不明確で、専門家や県から問題点の指摘が相次いでいる。

南アルプストンネルの縦断図
南アルプストンネルの縦断図
JR東海がトンネル湧水の県外流出について説明した国土交通省専門家会議=7日、東京都内
JR東海がトンネル湧水の県外流出について説明した国土交通省専門家会議=7日、東京都内
南アルプストンネルの縦断図
JR東海がトンネル湧水の県外流出について説明した国土交通省専門家会議=7日、東京都内

 7日の国土交通省専門家会議。JRの担当者は山梨県に流出するトンネル湧水の総量について、これまで静岡県の有識者会議で説明してきた「210万トン」から「300万トン」に変更した。ただ、総量が変わる根拠は不透明だ。
 山梨県境付近の1秒当たりの湧水流出量については静岡県の有識者会議で「0・08トン」としていたのを、国交省会議に提出した資料では「経時変化の把握」によって「0・12トン」に変わったとした。この数値は県議会最大会派の自民改革会議や報道関係者向けの説明資料には「0・31トン」と記している。
 また、トンネルを下り勾配で掘ると、突発湧水によって水没するリスクがあるという山梨県境付近で、掘削開始から2カ月間に限ると、湧水がほとんど出ない設定で総量を試算した。地質の詳しい状態が分かるコアボーリングをせず、トンネルを掘削する際、破砕帯(岩石が砕かれ、水を通しやすい層)がどの程度の頻度で現れるのかも分かっていない。
 JRは取材に「必要な情報は会議の資料に示しており、それ以上の回答は控える」と詳しい説明を拒んでいる。
 国交省の会議を踏まえて難波喬司副知事は「どんな複雑な計算モデルでも、現況の地質が分かっていないと何を計算しても分からない」と指摘する。県有識者会議では地質専門家の塩坂邦雄委員がJRの計算モデルについて「入力するデータが全く不足している」と問題視した。
 一方、JRは7日の国交省会議で、長野県側への湧水の流出量には全く触れなかった。トンネルを掘るのは地表から千メートル以上も深い所になるが、担当者は会議後、長野県境付近の地質に関する記者の質問に、「地表を歩いて調べた結果」を基に「水のたくさんある地層を想定していない」と答えた。次回の国交省会議で長野側について説明を求められれば対応するとしている。
 ■着工「流域理解前提」 JR社長
 JR東海の金子慎社長は25日の定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川流量減少問題に関し、南アルプストンネル工事の着工は「流域の皆さんの理解を得ることが前提だ」と述べた。理解を得たと判断するための具体的なプロセスは、流域市町の意向を受けて決めていく考えを示した。
 水問題を議論している国土交通省主催の専門家会議は、28日の次回会合で中間取りまとめに入る見通し。金子社長は取りまとめのタイミングについての評価は避けた上で、「(流域住民の不安解消という)目的が達せられるために、十分な(水問題の)解明がされるための時間は必要」と答えた。
 県は専門家会議に、大井川の渇水期の流量予測を検証するよう求めている。金子社長は「要請は国に対してなされた。(JRは)国や県の対応を受けて、必要な説明や対応をしていく順序になる」とした。

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