湧水量、JR説明に矛盾 静岡県が見解案【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、静岡県は15日に県庁で開いた県有識者会議「環境保全連絡会議」の地質構造・水資源専門部会で、国土交通省専門家会議の議論に関する見解案を示した。JR東海がトンネル湧水の県外流出区間で想定する湧水量であれば「ポンプによる排水が可能だ」と主張し、下り勾配で掘削できないとしているJRの説明の矛盾点を指摘した。ポンプ排水が可能なら静岡県内側から県境まで下り勾配で掘ることができ、湧水は県外に流出しないため。

県が国土交通省に送る見解案のポイント
県が国土交通省に送る見解案のポイント
県環境保全連絡会議地質構造・水資源専門部会での委員らの主な意見
県環境保全連絡会議地質構造・水資源専門部会での委員らの主な意見
県が国土交通省に送る見解案のポイント
県環境保全連絡会議地質構造・水資源専門部会での委員らの主な意見

 JRは7日の国交省専門家会議で、山梨県境付近の大規模断層を掘削する際、平均毎秒0・12トンの湧水量が流出すると想定し、これに突発湧水も含まれるとした。ところが、昨年1月に県に提出した文書では、県境付近の掘削に関し「下り勾配での施工は水没のリスクがある」とした上で、約8倍の「最大毎秒1トン程度」と突発湧水量を記載している。
 静岡県は見解案で「毎秒0・12トンであればポンプによる排水が可能で、JRの言う『危険であり工事はできない』というような湧水量ではない。県外流出を回避する工法の検討など課題が多く残ったまま国交省会議が次回に進むことには大きな問題がある」とした。
 部会長を務める森下祐一静岡大客員教授は「(JRは)下向きに掘れないのはなぜかという資料で突発湧水量を非常に過大に評価しているのに、山梨側に流れる水量は過小評価している。ダブルスタンダードだ」とした。
 静岡県は今後、流域10市町の首長と利水団体の意見を個別に聞いた上で見解を正式に取りまとめ、今月中に国交省に送付する。

 ■「検討不十分」指摘相次ぐ 静岡県有識者会議
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する静岡県有識者会議「環境保全連絡会議」の地質構造・水資源専門部会は15日、国土交通省の専門家会議で7日にJR東海が示したトンネル湧水の県外流出の影響を中心に意見交換した。地質などのデータが少なく、県外に流出するトンネル湧水量の検討が不十分だとする指摘が相次いだ。
 国交省専門家会議の委員でもある森下祐一部会長(静岡大客員教授)と丸井敦尚委員(産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)はJR側から新たなデータや概念的な水循環モデルが提示されたと一定の評価をした。一方で「地質の実際のデータがないため、不確実性がある」とし、改めて「破砕帯で(水の浸透しやすさを示す)透水係数がどうなっているかデータを取って把握を」と求めた。
 塩坂邦雄委員(サイエンス技師長)も「破砕帯でコアボーリングをした上で透水係数を設定すべきだ」と強調。会議に欠席した大石哲委員(神戸大教授)は事前に「想定されるトンネル湧水量の最大値、最小値を含めて影響を科学的根拠に基づいて検討を」とする意見を寄せた。
 オブザーバーの蔵治光一郎東大大学院教授は「関係者が参画する流域水循環協議会を設置し、流量、地下水、水質のモニタリング(観測)をすべきだ」と提案した。岩堀恵祐県環境保全連絡会議会長(宮城大名誉教授)は「本来は環境影響評価の段階ですべき議論」だと指摘した上で「水量と水質の議論は一緒にする必要がある」と述べた。
 委員らの意見は、静岡県が国交省に送付する見解に反映させる。

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