「ベビーシッターさん、ありがとう」の巻/子育てコラムあすなろ

 平日の朝、長男(2)が、「手足口病」「ヘルパンギーナ」を同時に発症していることが通院で発覚しました。当然、子ども園には登園できず、病児保育も感染症の子供は利用できない規則。私も夫もその日は急に仕事を休むことができず、祖父母も全員それぞれの仕事の出勤日。「長男の預け先がない」。育休復帰から1年余。ついに、最も恐れていた事態が起きました。
 これまでも長男は月1以上のペースで体調を崩してきましたが、親族の誰かが仕事を休んだり、病児保育を確保したりして、その日その日を何とかしのいできました。預け先が見つからなかったのはその日が初めて。出社時間まであと1時間。体調不良の息子への心配、仕事に行かなければいけない焦り、現状をどうして良いか分からない混乱。息子をチャイルドシートに乗せたまま、会社の駐車場で泣きました。
 藁にもすがる思いで、民間の支援機関に初めて電話しました。「今すぐ来てくれる人はいませんか?」という無理なお願いに対し、「見つかるか分かりませんが探してみます」とのお返事。しかし、その10分後には「見つかりました」と電話を頂き、数十分後にはベビーシッターの女性が我が家に到着。息子を預け、仕事先に向かいました。
 親戚以外の人に我が子を預けるのが不安で、シッター利用はためらっていたのですが、育休中に「いざという時のお守りに」と登録しておいたのが奏功しました。我が家に来てくれたシッターさんは初対面でしたが、優しそうな方で少しホッとしました。帰宅後に拝読したシッター記録からも、息子の好きな遊びに付き合ってくれたり食事を食べさせてくれたりした様子が分かりました。
 その日のシッター代金は1万円超。決して安くはありません。でも、突然の依頼だったのに、体調不良で不機嫌な2歳児を1日看て頂き、心から感謝でした。別れ際、その女性にシッターになった理由を尋ねたところ「自分も仕事を続けたかったけれど、子育てのために離職せざるを得なかった。我が子の手が離れたので、働く女性を助ける仕事をしようと思った」とのことでした。
 お年を伺いませんでしたが、「子供の手が離れている」とのことなので、今の子育て世代より、先輩世代の方かと思います。彼女が子育て真っ盛りの頃は今より、女性が働き続ける環境は未整備だったのだろうと思います。悔しい思いをした女性が、後輩世代の子育てと仕事の両立を支えてくれているのだと知り、頭が下がりました。
 ただ、息子は初対面の人と1日過ごして多少気疲れしたようです。シッターさんの帰宅後は、ずっと「抱っこ抱っこ」。私が少しでも別室に行くと号泣。寝るまで不安定でした。

 働く女性が増え、子育て支援が充実してきています。ワーキングマザーの1人としてはとてもありがたいのですが、当事者の子供にとっては、それもラクではないのかな、とも思いました。人生、良い所取りはできない。自分が働く選択をしたせいで、子どもにつらい思いをさせてしまう時もある。でも、働き続けるという選択肢があり、その選択を少なくとも1年以上続けられる職場環境、社会環境があるのは、やっぱりとても恵まれてもいる。そんなことをグルグル考えた1日でした。

子育てコラム「あすなろ」(812) 「ベビーシッターさん、ありがとう」の巻

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