​「おばけの時間」の巻/子育てコラム「あすなろ」

 先月で2歳になり、ますます絶好調の娘。日々の保育園通園がまた彼女の体力を向上させており、すくすくと頼もしく成長してくれているのですが、そんな中でも親の悩みは尽きません。特に最近1番頭を抱えているのは「寝てくれない問題」です。
 眠くないのに「寝なさい」なんて、大人でも嫌ですよね。分かっているんです! 分かっているのですが、「眠りが一番の成長」「寝ない子は脳の発達が…」なんて新聞やテレビで見聞きしてしまえば、私も娘のよりよい成長を願う母親。心も顔も鬼になり、寝かせようと必死になってしまいます。
 絵本を読んだり子守唄を歌ったり、ホットミルクを飲ませたり。でも、そんな母の努力をあざ笑うかのように、娘は飛び跳ねたり、転がったり、大きい声で叫んでみたり―と自由気まま。私はただ付き合うしかありません。
 ある夜のことでした。イライラが頂点に達した私は強制消灯。それでも大騒ぎする娘に言ってしまったのです。「もう、おばけの時間だよ」と。
 途端に無言になり、私に寄り添ってきた娘。隠れるように布団に入り、私に抱き付いて聞いてきました。
「おばけに連れていかれちゃうの」
「ちょっと…こわいの…」
 怖いものを遮るように目をつぶり、丸まりながら寝入った娘を横に、とんでもない一言を放ってしまったと心底後悔しました。成長を促し脳を育てるのが睡眠であるはずなのに、怖がらせるような言葉で眠らせるなんて、成長にいいはずがありません。怖い思いをさせてしまったと、深く、深く反省したのでした。
 そんなことなどなかったかのように、翌日からまた「寝てくれない問題」は継続中。でももう無理に寝かしつけようとせず、娘のペースに合わせています。時に例の言葉があやうく口から出そうになるのをこらえながら。
 「うーん、生活習慣が悪いのか…」「もっと遊び相手になって体力をけずればいいのか…」「もしかしてこの鬼のような顔のせい??」などと自問することもありますが。まあ、いつかは寝るだろう、夜遅かったら明日はその分たくさん寝ればいいさ。そう思えば少し気が楽になります。
 我が家のにぎやかな夜がまたきょうもやってきます。きょうこそ、早く寝てくれるといいのだけれど。

(みさ吉)

子育てコラム「あすなろ」(792) 「おばけの時間」の巻

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