【能登地震2週間】津波、発生1分で到達 日本海側、避難に難しさ

 東日本大震災以来の大津波警報が発令された能登半島地震。日本海側の津波は発生からの到達時間が短いのが特徴で、過去に大きな被害も出ている。今回も1分後には第1波が到達したとされ、避難の難しさが改めて浮き彫りとなった形だ。専門家は、揺れたら一刻も早く逃げる意識の徹底を呼びかけた。

津波で歩道に打ち上げられた船=7日、石川県七尾市の能登島
津波で歩道に打ち上げられた船=7日、石川県七尾市の能登島
津波に押し流された車が残る石川県珠洲市宝立町=5日
津波に押し流された車が残る石川県珠洲市宝立町=5日
津波で歩道に打ち上げられた船=7日、石川県七尾市の能登島
津波に押し流された車が残る石川県珠洲市宝立町=5日

 ▽余裕なく
 気象庁が石川県能登地方に大津波警報を発表したのは、1日夕の地震発生から12分後。テレビでただちに速報され、アナウンサーは緊迫した声で避難を呼びかけた。
 しかし東北大の今村文彦教授(津波工学)が国土地理院のデータなどを基に解析したところ、石川県珠洲市には1分程度、富山市には5分程度、新潟県上越市には12分程度で到達していたという。
 海に近い珠洲市鵜飼地区に住む左官業高坂春夫さん(73)は「すぐ行動したが、こんなすぐに津波が来るのかと恐ろしかった」と振り返る。「大津波警報のサイレンが鳴り、家を出たら津波が流れ込んできた」と話す避難者もおり、時間の余裕が、ほとんどなかったことがうかがえる。
 ▽過去100人犠牲
 2011年の東日本大震災や、今後の発生が懸念される南海トラフ巨大地震は、太平洋側のプレート(岩盤)境界付近で起きる「海溝型地震」。これに対し、今回の地震は海底活断層で起きた。
 日本海側は海岸線に近い断層が多く、津波の到達が早くなる。大陸と日本列島で反射して何度も押し寄せるのも特徴だ。このことが、津波防災を難しくしている。
 1983年5月に発生した「日本海中部地震」では、秋田県沖を震源として、秋田、青森両県で最大震度5(当時)を観測。最大10メートル超の津波が沿岸部を襲い、死者104人のうち100人が津波で死亡した。気象庁によると、第1波の到達までは10分以内だった。
 秋田県男鹿市の海岸では、小学4、5年生の児童13人が、遠足の途中で津波にのまれて犠牲となった。
 ▽啓発不十分
 ただ死者数が最悪32万3千人にも達するとされ、国を挙げて防災対策を進めている南海トラフ巨大地震などと比べ、住民への啓発は十分とは言えないのが現状だ。
 約2分で津波が到達したとされる石川県七尾市。海岸から約1キロに住む男性(74)が、警報発令直後に外に出ると、近所の80代の女性が「この辺に津波は来ない」と避難を渋っていた。
 住民数人で「東日本大震災の時、逃げずに亡くなった人がたくさんいたから」と説得し、一緒に高台に避難した。男性は「日本海側では、津波といわれても正直ぴんとこない人が多いかもしれない」と話す。
 車で避難した珠洲市の会社役員船本悦司さん(68)によると「いざとなるとパニックになって、避難訓練とは違う場所に逃げる住民も多かった」という。同市の担当者は、津波への危機感は住民間でも差があったとしつつ「多くの人が無事に避難できた」と振り返った。
 東大大学院の関谷直也教授(災害情報論)は、日本海側では津波の到達が早い一方、陸地の奥深くまでは到達しない場合が多いとも指摘。「内陸や高台へ速やかに避難することが重要。住民は日ごろから『揺れたら地震情報を待たずに即避難』を意識してほしい」と強調した。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞