女性らの共産主義運動描く 韓国長編小説、日本で出版

 日本の植民地時代の朝鮮半島で共産主義運動に参加した女性らの生きざまを描いた韓国の長編小説「三人の女」(上下巻)の邦訳が出版された。元新聞記者の著者趙善姫さん(63)は「運動は地主や資本家階級のみならず帝国主義との闘争だった」とし「日本には敵対的に聞こえるかもしれないが、朝鮮の独立運動家らがなぜマルクス主義に魅力を感じずにはいられなかったかを理解してもらえると思う」と語る。

作家の佐藤優さん(右)と対談する趙善姫さん=12日、東京都新宿区(アジュマブックス提供)
作家の佐藤優さん(右)と対談する趙善姫さん=12日、東京都新宿区(アジュマブックス提供)

 「三人の女」は実在する人物や史実に脚色を加えた小説だ。1920年、独立運動家を支えた著名弁護士、許憲の娘の許貞淑が植民地下の朝鮮半島から上海に渡る。19年の「三・一独立運動」に加わったとして留置場に送られた経歴を持つ朱世竹と現地で出会い、後に良家の娘だった高明子とも知遇を得て「植民地から独立するための最も強力な手段」としての共産主義運動で共闘する。
 許貞淑は中国共産党の八路軍にも参加。後に北朝鮮と中国の指導者となる金日成や毛沢東らとも交流、北朝鮮建国後は閣僚など要職を歴任する。一方、ソ連に渡った朱は政治犯の妻と見なされ不遇の死を遂げる―。
 軍事境界線を挟んで北朝鮮と対峙する韓国では独裁政権が長く続き、趙さんは反共教育を受けた。「共産党は角の生えた悪魔とされていた」。だが韓国紙記者だった頃に許貞淑について知り、小説にしたいと思うようになった。調べていると「芋づる式」に周囲にいた女性らに対しても興味が芽生え「再構成したら(朝鮮半島の)共産主義運動史になった」と話す。
 韓国では2017年に出版され4万部のベストセラーとなった。趙さんは「(登場する共産主義者も)人間的な悩みを抱えた人たちだったことを描けた」と語る。9月中旬には、邦訳版に解説を寄せた作家佐藤優氏とのトークイベントが東京都内で行われた。趙さんは「歴史に対する理解を共有できれば韓日の相互理解に役立つだろう」と期待している。(共同)

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