梅雨時期の防災 大雨リスク、総合判断を 降水帯なしで堤防決壊も【大型サイド】

 北海道を除く全国で11日までに梅雨入りし、今年も大雨シーズンを迎えた。6月初旬には各地で「線状降水帯」が発生、記録的な豪雨となった。今後も警戒が必要だが、過去には線状降水帯が発生しなくても災害になったケースがある。専門家は「河川氾濫など自分たちのリスクとなる引き金が何か、他の情報を組み合わせて気にかけるべきだ」と警鐘を鳴らす。

大雨の影響で被害を受けた新潟県関川村の集落=2022年8月5日
大雨の影響で被害を受けた新潟県関川村の集落=2022年8月5日
新潟県関川村、荒川
新潟県関川村、荒川
大雨の影響で被害を受けた新潟県関川村の集落=2022年8月5日
新潟県関川村、荒川

 昨年8月4日未明、記録的な大雨を観測した新潟県関川村。463戸が床上・床下浸水、12戸が全半壊したが、人的被害はなかった。「荒川」が村を横切るように流れ、山間部の湯沢地区ではその支川が堤防を突き破り、土砂と流木が集落へなだれ込んだ。
 堤防近くに住む無職高橋京子さん(75)はその少し前の3日午後11時ごろ、民間の防災アプリが表示するレーダーを見ていた。西から雨雲が連なり、村を覆いつつあった。「雨雲が線状降水帯かは関係ない。単純に大雨が来そうだと思った」と、自主避難した。
 4日午前0時時点で51・5ミリだった1時間降水量はその後、91ミリ、148ミリと急激に増加した。だが気象庁は線状降水帯の発生を知らせる「顕著な大雨に関する気象情報」を発表しなかった。形状の基準を満たさなかったためで、4日午前2時ごろに大雨特別警報を出した。
 一方、避難情報を出す側の村の防災担当者は「ピンポイントで狙われたような」雨の極端さに驚いた。4日午前1時ごろ、役場の駐車場や一帯は膝下まで冠水。村は荒川の水位に警戒を払っており、避難指示を出すタイミングを逃した。その後、大雨特別警報の発表を受け、5段階の警戒レベルで最高の避難情報「緊急安全確保」を出した。住民の一部は自主避難済みだった。
 関川村以外の新潟県や隣の山形県の上空では3日昼過ぎから複数回、線状降水帯が発生していたが、村は深夜まで雨脚が比較的落ち着いていた。湯沢地区の支川の勢いは想像以上で、担当者は「予想もできない大雨だった」と振り返る。
 今年6月初旬、各地を襲った記録的豪雨では、線状降水帯の半日前予測や発生情報が盛んに出されたが、土砂崩れが起きた浜松市で男性が死亡するなど被害が出た。
 行政の防災対応に詳しい富山大の井ノ口宗成准教授(災害情報)は線状降水帯の情報に加え、地図上で土砂災害や河川氾濫の危険な箇所を把握できる気象庁のサイト「キキクル」や地元気象台との連携などを挙げ、他の情報と組み合わせることが必要だと指摘する。
 的中率が4分の1程度にとどまる予測情報については、精度が上がれば「線状降水帯という重い言葉が生かされ、行政、地域、福祉施設、学校などが早い段階から防災態勢を準備できる」と、今後に期待を込めた。

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