知的障害者向けの母子手帳作成 育児支援の冊子も、来年配布へ

 障害者支援や看護学の大学教授らでつくる研究班が、国の科学研究費で知的障害者にも分かりやすい母子健康手帳や育児支援冊子の作成を進めている。知的障害者の出産・子育てを巡っては、北海道のグループホームで入居者が不妊手術や処置を受けていた問題が昨年、明らかになり、育児を支援する仕組みが整っていないことが背景に指摘されている。研究班は母子手帳については来年、自治体の窓口などで通常の手帳と合わせて当事者に配られるようにしたい考えだ。

大学教授らの研究班が2020年に作った冊子(左の2冊)と今年中の配布を目指す母乳育児に関する冊子
大学教授らの研究班が2020年に作った冊子(左の2冊)と今年中の配布を目指す母乳育児に関する冊子

 研究班は、びわこ学院大の藤澤和子教授(特別支援教育)と、西南女学院大の杉浦絹子教授(看護学)の2人。2021年度から事業に取り組んでいる。
 通常の母子手帳は内容や項目を国が定めており、「分かりやすい版」は副読本として使ってもらう想定。研究班の調査では、通常版は知的障害者には理解が難しい用語が多くあった。平易な言葉に置き換えたり、視覚的に分かりやすいようイラストを挿入したりする考えだ。
 24年から希望する自治体に送るほか、インターネットでダウンロードできるようにする予定。母子保健や福祉の専門職を対象に活用方法も示す。
 このほか、知的障害がある親向けに「母乳育児」「赤ちゃんの泣きと眠り」に関する分かりやすい冊子も作り、今年中の配布を目指す。
 両教授は20年には、当事者夫婦を対象に「赤ちゃんを産んだ後の避妊」に関する解説漫画を発行。知的障害がある妊産婦への対応をまとめた保健医療職向けハンドブックも製作した。
 両教授は「知的障害やボーダーの人が妊娠・出産する例は既にあり、現場ではニーズがあるのに、対応が追い付いていない。当事者が自らの意思で主体的に子どもを産み育てることを支援したい」としている。

 母子健康手帳 戦時中の1942年に「妊産婦手帳」として発行されたのが始まり。母子保健法に基づき、妊娠を届け出た人に自治体が交付する。妊娠の経過や予防接種の記録などを記入するようになっており、内容は国が様式を定めた全国共通の部分と、国の作成例を基に自治体が任意で作っている部分がある。厚生労働省の有識者検討会が昨年度まとめた報告書に基づき、政府は記載項目の拡充など内容をリニューアルする内閣府令を4月1日に施行した。

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